小学校でのプログラミング教育の問題点と自宅でできる準備とは?

 

いよいよ2020年度よりプログラミング教育が小学校で導入されます。コンピューターの働きを身近に感じ、活用する姿勢や考え方を学ぶことになりますが、問題点はないのでしょうか?そこで今回はプログラミング教育のねらいをおさらいしながら問題点を探りたいと思います。あわせて、来年から始まるプログラミング教育に向けて、家庭でできる準備についても紹介します。

 

小学校で行われるプログラミング教育のねらいと問題点とは?

プログラミング教育のねらいは、論理的思考力とICTリテラシーの育成

 

小学校でのプログラミング教育のねらいは、どのようなものなのでしょうか?文部科学省によると、ねらいはおおまかに2つあります。

 

1つ目のねらいは「プログラミング的思考」を育むことです。

 

「プログラミング的思考」とは「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、 一つ一つの動きに対応した記号をどのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけばより意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」を指します。(文部科学省「小学校プログラミング教育の手引き」より抜粋)

 

そのままだとピンとこない方も多いのではないのでしょうか。身近なものでいうと、料理レシピがプログラミング的思考に近いと言えます。なぜなら、レシピ本では一般的に、作業手順を記号化しながら手短に記載しているからです。

 

具体的に、上記のプログラミング的思考の説明と当てはめてみましょう。

 

「玉ねぎとろとろのビーフシチュー」(=意図する活動)のレシピ

 

「玉ねぎを細切りにする(A)(=記号化)」

「牛肉を食べやすい大きさにカットする(B)(=記号化)」

「まず(A)を飴色になるまで炒める」

「次に(B)加えて炒める」・・・

 

いかがでしょうか。「プログラミング的思考」とは、「活動を記号化して端的に、そして順序だてることで分かりやすくすること」とも言えそうですね。

 

プログラミング教育の2つ目のねらいは、情報社会が情報技術に支えられていることに気づき、情報を活用しようという態度を育むことです。身近な生活でコンピュータが活用されていることや問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。これは、ひと言でいうとICTリテラシーの育成といえるでしょう。

 

小学校プログラミング教育の手引き第2版P6(文部科学省)

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1403162.htm

 

 

プログラミング授業の導入により、通常の学習時間が削られる恐れがある

 

一方で、プログラミング授業の導入については問題点があるという声もあがっています。

 

その1つが、今ある学習時間への影響です。科目の新設はせず、算数や理科などの既存科目の授業内でタブレットなどのICT機器を使用することになっていますが、授業時間内でやることが増えることは確実です。結果、既存の学習時間の一部を削ることが必要になるので、一般的な知識などの基礎学力をつけるための時間が確保できるのか不安が残ります。家で基礎学力をつけるといっても、お子さんに何をどのように取り組んでもらえばいいのか分からず困ってしまうお母さんやお父さんも多いのではないのでしょうか。

 

教員の指導力が未知数。ICT環境整備状況にも懸念

プログラミング教育導入の際の2つ目の問題点は、プログラミング教育の質そのものについてです。

 

ICT環境の整備や教員指導力の状況についての調査「平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」(文部科学省)によると、指導力については、日本全体でみると年々向上している一方で、都道府県別にみるとばらつきがあり、平均値を下回る県が過半数を超えるという結果でした。このことから、プログラミング教育について、指導力が高い県とそうでない県の差が大きいのが現状といえます。

 

また、ICT環境整備状況についても、教員の指導力と同様に都道府県格差があることが分かりました。「教育の情報化の実態等に関する調査結果」(文部科学省)によると、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は、ここ5年で6.4人から5.4人と改善されていますが、都道府県別に見ると1台あたり1.8人〜7.5人と県により開きがあることが分かりました。

 

まとめると、教員指導力やICT環境整備の状況は都道府県格差があるのが現状です。さらに同じ県でも地域や小学校単位で差があるケースもあるので、不安になる人もいるのではないのでしょうか。気になる場合は行政区のホームページなどで調べてみるとよいでしょう。

 

 

平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)【速報値】 (文部科学省)

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1420641.htm

 

 

プログラミング教育の問題点が解消される見通しはある?

既存科目の理解を深める助けとしてプログラミングを使う

1つ目の問題点としてあげた、既存の学習時間への影響についてですが、算数、理科、総合的な学習の時間では、プログラミングを使って知識理解を深めるとされています。例えば、プログラミングによって正方形を描いたり、人の有無や部屋の明るさによって自動的に扇風機を制御するプログラミングの体験をすることが示されています。

 

確かにプログラミングの導入、知識を印象づけて覚える場面では役に立ちそうですが、一方で漢字や計算練習などは反復学習なしには定着しません。この時間が授業時間でとれないとなると、基礎学力は片手落ちになることも考えられます。 

教員サポートとして、教員向けポータルサイトや企業との連携を想定

 

教員の指導力向上のための取り組みとして、政府は教育・IT関連の企業・ベンチャーなどと共に「未来の学びコンソーシアム」という推進組織を立ち上げました。現場のニーズに応じたデジタル教材の開発促進や、指導のサポート体制構築を推進するようです。

 

また実際に、具体的な指導事例を掲載しているウェブサイト「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」をリリースし、教員の授業づくりのサポートを推進する動きがみられます。

 

企業と連携しての推進活動には期待できますが、実際の授業自体は基本的には現場の教員が行うことになります。都道府県によって指導力にばらつきがあるなか、どのような授業が行われるのかは未知数といえるでしょう。

 

 

 

学校のICT環境整備に助言を行う「ICT活用教育アドバイザー」を派遣

 

 ICT環境整備を進めるための策としては、学校のICT環境の整備など教育におけるICT活用を図ろうとする教育委員会(自治体)のニーズに応じて、「ICT活用教育アドバイザー」を派遣することが決まり、平成27年より実施しているようです。

 

ICT活用教育アドバイザー派遣事業(文部科学省)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1402867.htm

プログラミング教育の問題点をクリアするために、自宅でできることは?

「読み書き計算」は思考力の土台。家庭で基礎学力定着を図ろう

情報技術社会となった今、プログラミング教育はこれからの時代に欠かせないものとなりましたが、内容が高度になるにつれて思考力もより必要になってきます。思考力の土台としてはやはり「読み・書き・計算」の力が重要になってくるため、基礎学力の定着はしっかりと行うとよいでしょう。

 

「読み」の力をつける例をあげてみましょう。国語の教科書の音読が宿題に出されたときには、お子さんに音読してもらったあとに、「誰が」「何を」「どうした」について質問をすることで正しく読み取る訓練ができます。「読み」が正確になると「書き」の力(正しく伝える力)が伸びるので、将来的に正しくプログラムする力につながっていくことが期待できます。

 

プログラミング的思考は、レジャー計画や料理のお手伝いなどでも身につく

 

プログラミング的思考とは、ひと言でいうと「目的を達成するためには何をどんな組み合わせで、どの順番で行えばよいのかを論理的に考えていく」思考回路です。

 

身近な例でいうと、旅先を決めていつどこにどのように行くかプランをたてたり、先述のレシピの話のように料理の材料や手順を考えたりすることと、同じ頭の使い方をします。ですので、お子さんと一緒に旅行のプランニングや料理をすることで、プログラミング的思考の土台づくりができると考えられます。 

洗濯機も立派な教材?! ICTリテラシーが身につく子どもとの関わり方

 

プログラミングというと、特別な機械といった印象を受ける方も少なからずいるのではないでしょうか。実は洗濯機や電子レンジ、炊飯器など身近な電化製品はすべてプログラムされています。ですので、電化製品はプログラミング教育の導入には、うってつけの教材といえます。例えばこんなふうに取り組んでみましょう。

 

洗濯をするときに、お子さんに「この洗濯機は、『“洗い”は"何分”とボタンを押してくれたら、洗濯機はそのとおりにします』とあらかじめ命令(プログラム)されてるの。だから、『15分』のボタンを押すと、『15分洗ってください』という命令が洗濯機に伝わってそのとおりにしてくれるんだよ。」というような声かけをします。

 

このような声かけで、子ども達はプログラミングを身近に感じ、情報活用をしようという姿勢がみられるようになるでしょう。

 

おわりに

以上、プログラミング教育の問題点と国の対応策、そして家庭でできる取り組み例を紹介しました。

 

小学校の段階で大切なのは、プログラムを身近に感じること、活用しようという姿勢やそのために必要な論理的思考の習慣や方法を育むこと、そして思考力の土台となる「読み書き計算の力」をつけることの3点といえるでしょう。

 

プログラミング教育は、子ども達の様子や現場の先生の声を元にブラッシュアップされていくと思います。並行して家庭では電化製品を活用するなどして、まずは子ども達がプログラミングを身近に感じられる関わり方をしていけるといいですね。

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