国際基準の「子育て」〜お金とは何か?という教育〜

親である皆さんは、お仕事をされたりしてお金を稼ぎ、その稼ぎで子供を育て貯金をしたり、そのお金で家族の娯楽を得たりという行動をされていると思います。

でも、そもそもお金の教育とは、一般的にどう伝えるものなのでしょうか。

実は、このお金の教育が現在の閉塞感が生まれた日本の経済を作ってしまったと言っても過言ではありません。

欧米との比較で、この部分の教育でもたくさんのことがわかってきます。

少々難しいお金の話ですが、少しお付き合いください。

お金の実体

少し、子育ての話から離れて、私たちがどうお金というものを捉えていて、お金というものがそもそもこの世の中に生まれた本当の意味を考えてみます。

お金がまだ存在していなかったころ、人間は物と物を交換するという「物々交換」の時代を長く過ごしてきました。
そのころ、日本でもだれかに何か助けてもらった場合、物でなくてもそのサービスやその心意気に対して物をお返しするという文化があったでしょう。
お金がこの世の中に登場した背景は、資本主義の台頭など色々な理由がありますが、そちらはそうした専門書にお任せするとして、どうしてお金が必要だったのか、ということを考えるとお金に対する教育の考え方も変わってきます。

物々交換から金銭のやり取りに移る時、お金はそのころ(今もそうですが)物として普遍的な価値を持つ「金」をベースに作られていったのです。

でも、地球上に埋蔵されている金の量というのは、物理的にも限りがあり、その金を皆が平等に持つということが難しかったという背景があります。

ですので、金の価値に変わるお金というものを作ったわけですが、そのお金を使って、先ほど説明したような「もの」や「サービス」に対してお金を支払うという方法に変わっていったのです。

ここで大切な原理原則として、お金は「金(きん)」がベースであり、もともと、皆で金を持ち合って、物やサービスなど人が作り出すものに感謝の気持ちを持って支払おうという、皆で共有(シェア)している金を動かして人を幸せにしてくれるもの、助けてくれるサービスなどに感謝の代わりに支払おうという気持ちがあったことを忘れてはなりません。

これは、昨今流行り言葉になっている「ブロックチェーン」なども同じことですし、実はこのコンセプトを忠実にインターネットなどを通じて再現しているシステムなのです。

ブロックチェーンをご存じない方に簡単に説明すると、皆さんがシェアするブロック(金額の台帳)をシェアして繋ぎ、管理する。ある思いやりに出逢って物やサービスを得たら、その見返りに自分の保有するお金をシェアする台帳へ送りこみ受け取り側に押し出されて受け取り側が収入を得られるというシステムです。

欧米と日本でのお金についての教育方針の違い

実は欧米や、特にお金の文化を深く考えているイスラエル人などは、小さな子供の時からこうした教育をします。

よく日本で「欧米では子供のころから投資を教える」などと伝えられていますが、これは投資を教えているのではなく、お金とは何かという教育をしているのです。

お金は、先ほど言ったように皆でシェアする金の代わり。シェアの精神で扱うものでしたし、今でも扱わなくてはなりません。

英語で、会社の株をShareと呼ぶことがありますが、このShareという言葉を見るだけでラテン語をベースにした国々は、言葉の使い方からも自然とシェアの精神の上にたっているものという感覚を得ます。

結局のところ、金をお金に変えて、きちんとした製品、サービスを提供してくれる会社に対して、株(シェア)で投資をしたり、お金(シェア)を渡して交換してもらう、そうした精神を子供たちにも教えているのです。

さて日本ではどうでしょうか?

日本では、高度成長期に育てられた私の世代では特に、「お金は貯めるもの」と教わっているように思います。貯金・貯蓄を善としたのです。

実は、ここに現在の日本を生み出してしまった根本的な原因があります。このコラムを書いているいまでも、そして今から十数年前から、日本のニュースにゴミ処理場などで見つかる大量なお金の話がよく出てくるようになりました。

それはなぜか?

高度成長期にお金は貯めるものとして社会が理解を深めていってしまったばかりに、老後の心配などからお金を貯めておくという価値観が広がったように思います。

しかし、お金とはあくまでも前述のように金でシェアするものの代わり、少なくとも貯蓄するならば金融機関に預けて、お金本来の仕事場である社会へ還元し返す、シェアする本来の意味を持たせなくてはならなかったのです。

しかし、不幸なことに日本の金融危機とビックバンをきっかけに金融機関の信頼が落ちて、人々が不安になり自分でお金をためる、いわゆる「タンス預金」をしだしたわけです。それが、亡くなった方たちの荷物を中心にゴミ処理場などで見つかるという結果になっていきました。一説には、1600兆円程度ある日本の資産金額のうち、約半分がタンス預金の状態になったと2016年ごろに言われています。これらのお金はもう社会へ戻ってこないかもしれません。

いまの家族形態で人間が暮らしていると、本当にシェア(お金)を受け取らなければいけない世代は誰でしょう?

それは、20代~40代のいわゆる「子育て世代」と言われ、働き盛りの人たちなのです。子供を育てるには、色々なものやサービスが必要で、一番シェアが回ってこなければいけない世代です。

しかし、今の日本はどちらかと言うと歳をとった人たちのほうがお金を貯めている。タンス預金で世の中に出ないお金が日本にあるお金の半分程度になってしまっている。

その結果、なかなかシェアが回ってこないという結果になってしまったように思います。そして、人間はお金を持ったまま天国に行くことはできないので、お金だけが焼却炉などで見つかってしまうのです。

もう一度欧米に戻ってみましょう。特にアメリカでは、日本でも有名な話ですが「貯蓄率が低い」と言われています。確かに貯蓄率は低いようです。銀行に100万円程度のお金を預けていると、必ずといっていいほど銀行から連絡がきて、投資に回さないか、老後の投資にしないかと質問されます。

実は、アメリカ人は貯蓄率が低くても、投資、特に老後のための投資には、とてもお金を使っています。その投資は、投資信託や株、公債や社債、定期預金など形は様々ですが、基本的には老後の投資をしていない人は無責任という文化があるのです。
実は、ここにタンス預金を必要としない、させないカラクリがあって、お金はシェアするものという精神が息づいているのです。

もう一度日本に目を向けると、実は日本でもお金はシェアするものという文化があった時代があるようです。

そこで生まれたのが「金は天下の回り物」という言葉。

主に商人から発生した言葉かもしれませんが、これは欧米の文化では「当然」の常識になっています。先ほどから言っているようにシェアすることが、お金を回すこと。金の時代からそういう気持ちで回していこうというのが、お金に対する考えでした。

IMF(世界投資銀行)が1980年から2015年の35年間の世界各国の資産保有量のデータをまとめたものを、グラフにして動画にしたものがインターネットに流れていますが、この動画を見ると一目瞭然なのが欧米の各国、特にキリスト教をベースにした(アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、ブラジル、韓国など)は、35年間、それほど変化がありません。
逆にアジアの国々、日本や中国、インドなどは大きくなったり小さくなったりを繰り返しています。

このデータが表すとおり、実はお金にシェアの精神がない国が、いま色々と策を練ってどうしたらお金が貯まるのかを試行錯誤している証拠なのです。
ところが、お金は貯めるのではなく、回すことで回ってくるという欧米のもともとの考え方が、逆に各国の財産保有量を減らすことがないと証明されているのです。

すこし生真面目なお金の話が長くなりましたが、これで少しお金と教育の関わりが見えてきたと思います。

お金をどう教えるか

それではお金についての教育する時のやり方についてです。

まず、前述のお金の実体を理解できない年齢のお子さんには、実体を教えることはせず、使いかたや数え方など基本的なことを教えれば良いでしょう。
ただし、お金の実体の説明(シェアしているという話)を可能な年齢の早い段階でそれも繰り返し伝えます。子供達の記憶の中にお金=シェアという概念を育て続けてください。
これは、親として1つのおもちゃを他の子供とシェアしながら使うということを伝えることと同じです。お金であろうと物であろうとシェアの気持ちを忘れずに扱うということを教えます。
また、何かの思いやりや自分が本当に欲しいものを得た時、それを与えてくれた人、作ってくれた人への感謝の気持ちでその金額を払うのだということを教えます。

ある程度(個人差はありますが、小学生の低学年でしょうか)の年齢になったら、前述のお金の実体について噛み砕いて説明し始めてください。そして、お年玉やお小遣いなど自分の元に来たお金が誰のどのような気持ちと共にやって来て、どういう使い方をしてあげるのかということを真剣に一緒に考える時間を作ります。

例えば、祖父や祖母から頂いたお年玉はどのようにして祖父祖母が手に入れたものか、そしてそれが何故、子供である自分に流れて来たか、そこにある気持ちや思いやりというものはどういうものなのか、という調子で中高生に成長するまで繰り返します。
高校生や大学生になって実際に自分がアルバイトやお手伝いをしてお金を得ることのできる歳に近づいて来たら、どうして自分自身の労働の対価としてお金が貰えるのか、自分が社会で成した役割はなにかということを数回話し合うと良いでしょう。
人の喜びや救われる気持ちがお金になって恩返しのように自分に戻ってくることがあるということを学ぶわけです。

余談ですが、これはアメリカの例で中学や高校で何かしら社会的に迷惑な行為をしてしまった時、人を嫌な気持ちにさせた時、「社会貢献」という呼ばれ方でボランティア作業をさせられます。
これは無償労働です。私の子供がそれを言い渡されたときは、先生たちや生徒が毎日使用する電子レンジの掃除でした。

通常、学校がお金をお支払いして掃除してもらっている業者がいるようなのですが、敢えて無償でルールを破って迷惑をかけた子供に掃除をさせるということで代償をさせるというものです。

こうして、社会貢献とビジネスが密接に関わっていることも体感していくのです。そしてビジネスは社会貢献、社会への迷惑をかけた場合は無償で社会貢献をするのだという心を育てています。

これもアメリカの例ですが、よく子供のいない家庭や子供が巣立って行った家庭の大人が、自分の家の庭掃除や、大きな家具の移動などの時に近所の中高生や大学生に手伝ってもらって、お小遣いをあげるということがあります。
これは紛れもなく協力した子供達の気持ちや労働力に対して感謝の気持ちがあって渡すお金です。
日本でも以前はよく近所の人の手伝いをしてお小遣いを貰えたり、食べ物をご馳走してもらったりということがありました。
こうして子供達は、お金=気持ち=対価という図式を学んでいきます。
その中で本当に大切なことは、自分自信がお金の流れの循環の一部に加わっているという意識で・初めて加わったときは、一緒に喜んで称賛してあげることが大切かもしれません。社会の一員になっていく瞬間のお祝いですね。

次回は、得たお金を社会の一員として社会へ流す、「使う」ということについて教えることを考えてみましょう。いつも最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございます。

鷹松弘章

国際基準の「子育て」

①国際基準の「子育て」〜幸せとは〜

②国際基準の「子育て」〜好きなこと探し〜

③国際基準の「子育て」〜好きなことを探して、見つかったら〜

④国際基準の「子育て」〜「してはいけないこと」とは、どう伝えるか〜

⑤国際基準の「子育て」〜社会の迷惑を悪として捉え倫理観を育てる教育〜

⑥国際基準の「子育て」〜他人と自分が違うこと、それは良いこと〜

⑦国際基準の「子育て」〜自分勝手で何が悪い。人は人、自分は自分〜

⑧国際基準の「子育て」〜お金とは何?という教育〜

⑨国際基準の「子育て」〜意味のあるお金の使い方の教育とケチ〜

⑩国際基準の「子育て」〜究極の目標子供の自立。実は親の自律が鍵だった〜

⑪国際基準の「子育て」〜人はなぜ生きるのか、徳の循環を伝える〜

⑫国際基準の「子育て」〜親の幸せを諦めないで。幸せな親にしか幸せな子供は育てられない〜

⑬国際基準の「子育て」〜現実的なこと「同性愛、男子、ひとりっ子」〜

⑭国際基準の「子育て」〜今からでも遅くない、障碍・鬱・年代別の子育て、そして最後に〜

1998年Microsoft Corporation日本支社へ入社。2001年からアメリカ本社にて技術職の主幹マネージャーとしてWindowsなどの製品開発の傍ら、採用・給与・等級などのレイオフまで携わり、米国企業の最前線で勤務。20年の勤務後、現在はデータ解析大手の米国Tableau Softwareシニアマネージャー。同時に東証一部上場のスターティアホールディングス株式会社社外取締役、NOBOARDER Inc. 社外取締役兼 CTO。2019年5月には「世界基準の子育てのルール」という本も出版。

※連載は週1度を予定しております

※内容は変更することがあります

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