キャリア教育とは?今の小学生に必要な「生きるチカラ」の育み方
「人気の職業は『youtuber(ユーチューバー)』」など職業が多様化するなか、お子さんが将来どんな職業に就くか不安に思う人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、キャリア教育って何?なぜ必要なの?小学校ではどんな事が行われているの?といった事について紹介します。また、キャリア教育つまり「生きるチカラ」を育むために、家庭だからこそできることについても触れたいと思います。
「人気の職業は『youtuber(ユーチューバー)』」など職業が多様化するなか、お子さんが将来どんな職業に就くか不安に思う人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、キャリア教育って何?なぜ必要なの?小学校ではどんな事が行われているの?といった事について紹介します。
また、キャリア教育つまり「生きるチカラ」を育むために、家庭だからこそできることについても触れたいと思います。
キャリア教育とは?なぜ必要?
キャリア教育とは、生きる力=「職業的自立」と「社会的自立」を促す教育
キャリア教育とはいったい何なのでしょうか?文部科学省の定義によると、「一人ひとりの社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育」とされています。抽象的で分かりづらいと思った人もいるのではないでしょうか。少し噛み砕いてみましょう。
・社会的自立とは、「自分の個性を理解し主体的に進路を選択する力」
・職業的自立とは、「勤労観・職業観をもって働くこと」
また、キャリアとは、「『働くこと』を通して人や社会に関わることになり、その関わり方の違いが『自分らしい生き方』となっていく」と定義しています。上記の2つの自立を促す教育をすることで、子ども達が「学び続けたい」「働き続けたい」と強く願い,それを実現できるようになることが「キャリア教育」の大きな目標です。
キャリア教育の背景(1)子ども達が将来を描きにくい時代になっている
ではなぜキャリア教育は必要なのでしょうか?理由は2つあります。まず1つ目は、社会状況にあります。情報化・グローバル化など、社会が急激に変化するなかで、働くことに対してイメージや将来設計がつきにくくなってきているためです。実際、ニュースなどでも年功序列制度が崩れはじめていたり、AI化により今ある職業がなくなると叫ばれていたりするのをよく耳にしている方も多いのではないでしょうか。
キャリア教育の背景(2)子ども達の精神的・社会的自立が遅れている
キャリア教育が必要な2つ目の理由は、子ども達自身の発達状況にあります。身体的には昔に比べると発達が早熟傾向にあるのに対して、精神的・社会的には自立が遅れる傾向にあると言われています。具体的には,人間関係をうまく築けない,自分で意思決定できない,自己肯定感をもてない,将来に希望を持てない,といった子どもが増えているそうです。
お子さんの様子はいかがでしょうか?「うちの子は大丈夫!」と思う人もいれば、「うちの子だけじゃなくて他の子もそうなの?」と感じた人もいるかもしれません。
学校でのキャリア教育は、学年別にどんなことをするの?
現在、子ども達の状況を踏まえて、文部科学省が主体となって、キャリア教育を教育現場で実施しています。「小学校からキャリア教育をするのは早いすぎるのでは?」と思うお母さんお父さんもいるのではないでしょうか。
小学校でのキャリア教育は、具体的な仕事に直結する知識や技能を習得するような「職業教育」は行いません。あくまでも自分の未来を切り開こうとする気持ちや態度、働くこととはどういうことなのかの意識を芽生えさせて高めていくことが教育目標です。また、科目の新設はなく、今ある教科の学習の中で「キャリア教育」の視点を取り入れるかたちになります。では各学年別に、主な方針と事例をみてみましょう。
低学年では、意欲と自信を持って活動できるようにする
まず、小学校低学年でのキャリア教育の方針は、小学校生活に慣れることから始まり、身の回りの人や事への関心を高め、自分の好きなことを見つけてのびのびと活動することです。実践例は次のとおりです。
・学校で働く、用務員、給食調理員、養護教諭などにどんな仕事をしているのか、インタ
ビューを行いグループごとに分かったことを発表した(1年生 生活科)
・子どもまつりで、1年生と協力して自分たちで遊びやルールを考えてお客さんが楽しめる
ような遊びのコーナーをグループで分担して作った。当日は、幼稚園、他学年、地域の人 と関わった(2年生 生活科、特別活動)
中学年では、友達と活動しながら自分の役割を自覚できるようにする
中学年でのキャリア教育の方針は、友達と協力し合う態度や、友達といることで自分の特徴に気づき、役割を意識することを大切にしています。実践例は次のとおりです。
・地域の商店街に協力してもらい、社会科の学習を踏まえながら、お手伝いをした。商店で
働く人の様子や工夫、努力に実際に触れることで、自分の役割を果たすことの大切さや相 手のことを考えた言動の重要性を実感した。(3年生 社会科、総合学習)
・国語科、社会科などとの関連を図りつつ、地図づくりや地域の名産食品を、ゲストティー チャーを招き実際に作ってみた。あわせてパンフレットづくりを行った。役割に対する理 解を高めた。(3年生 国語科、社会科、総合学習)
高学年では、失敗を恐れずに取り組むことで自分に自信を持てるようにする
高学年のキャリア教育では、少しレベルアップして、主に、役割や責任を果たすこと、社会と自分の関わりから自分から夢や希望をふくらませることを目標としています。実践例は次のとおりです。
・美術館に協力をおねがいして、展覧会を支える造作会社、デザイン会社、印刷会社など 裏から支える様々な職業の人との関わりの場を設け、仕事への興味をもつようにした。同 時に、子ども達自身が校内で写真展を開く計画を立案し、校内写真展と自分との関わりや 見通しを持ってもらい、チャレンジする意欲の継続につながった。(5年生 総合学習)
・各分野で活躍している人の生き方を調べたり、自分が一流だと思う人をインタビューした りして、人生の先輩方の生き方を参考に将来の目標を立てた。(6年生 総合学習)
いかがでしたでしょうか。まとめると、低学年では小学校生活への適応と身の回りの社会について目を向けること、中学年では協力・役割の意識や自分の良さを見つけること、高学年では責任感と将来のビジョンについて考えることが、小学校でのキャリア教育で重要視されているようです。
家庭だからこそできるキャリア教育で、子ども達の生きるチカラを育もう
学校や企業だけでなく家庭の両輪で子ども達と関わることが大切
キャリア教育は、社会状況や子ども達の状況を踏まえ、小学校の授業に取り入れられていますが、実践例からも分かるように、地域の団体の協力が子ども達のキャリア教育に大きな役割を果たしているといえるでしょう。つまり、「社会の事は社会に出て聞こう・体験しよう」という発想だと考えられます。
そしてもう一つ、子どもたちが自分の特徴を見つけたり、仕事への関心を育んだりするのに欠かせないが、家庭の存在だと考えられます。なぜなら、子ども達のことを一番よく知っているのは、紛れもなく、お父さんお母さんをはじめとした、一緒に暮らす人たちだからです。では、家庭でできるキャリア教育は、何をしたらよいのでしょうか。
お父さんやお母さんの仕事の話が職業的自立を促すきっかけになる
キャリア教育、つまり「生きるチカラ」の2大柱のうちの1つは、「職業的自立」でした。そのために必要なのは、勤労観・職業観を育むこと。このポイントは、お父さんやお母さんの影響を大きく受けることでしょう。効果的なのは、普段の会話の中に「なぜ今の職業についたのか」「なぜ働き続けるのか」など、働くことについて考えていることを、さりげなく盛り込むことでしょう。
例えば、もし、お子さんが「今日学校でうまくいかない事があって、悲しかったんだ……」とつぶやいたら、話を聞いてあげた後で次のように話してあげましょう。
「お父さん(お母さん)も、昨日実は会社で悲しいことがあったんだ。でも、今日はお客さんが喜んでくれて嬉しかったから、これからもお仕事頑張るつもりだよ。今の仕事はお客さんの喜ぶ顔が直接見られてやりがいがあるからね」というふうに話すと、仕事の喜びや苦労、そしてなぜその仕事を選んだのかといった、職業観をお子さんは感じられるでしょう。
子どもに役割を与えて任せることで社会的自立心が育まれる
キャリア教育のもう1つの柱は「社会的自立」でした。自分の個性を知り、自分で進路を選択する姿勢を育むためには、日々の生活で、自分で決めたり考えて行動したりする経験を積み「自分はできる」という自己肯定感を育むことです。家庭でできることとしては、お子さんにお手伝いというかたちで家の仕事を与えるのがよいでしょう。
例えば、毎週金曜日は「お米を炊く」という役割を与えるとしましょう。「お米を炊いてくれない→ご飯の支度が完了しない→いただきますができない」という問題が発生するので、
「責任」の意味が伝わりやすいですよね。
また、お手伝いのプロセスも「生きるチカラ」を育む良いきっかけになります。
例えば、お米を何ごう分研いだのかを忘れてしまい、入れるべき水の量が分からなくなってしまったとします。このとき、「何ごう分お米を研いだかを確認するためには、何をすればよいかな?」と声をかけてみましょう。そうするとお子さんは一生懸命考えて、決めて、行動します。
うまくいったら、大きな自信になり自己肯定感が高まることでしょう。失敗したら、「次はメモをしよう」など予防策を見つる手伝いをしてあげましょう。お手伝いをやり抜く経験が、未来を切り開く力になっていくのだと考えられます。
まとめ
以上、キャリア教育の意味と背景、小学校での取り組み例、家庭でできるキャリア教育の具体例のご紹介でした。
いかがでしたでしょうか?子ども達が大人になる頃には働き方は今よりももっと多様化しているでしょう。そんな時代の変化に流されないためには、「生きるチカラ」が必要で、具体的には「自分なりの職業観を持つこと」と「自分らしい人生を切り開こうとする姿勢を持つこと」の2点が重要だということが分かりました。
学校や地域、そして家庭での関わりで、子ども達の未来に向けた「生きるチカラ」を育て、将来、一人ひとりが希望を持って社会生活を送り、思い描いたような人生を歩めるといいですね。