【イベントレポート】パラアスリートとファミリーで考える「ふつう」って何だろう?
SDGsの目標11として掲げられている「住み続けられるまちづくりを」。2030年までに、女性や子ども、障がい者、高齢者など、すべての人を取り残さない持続可能なまちづくりが求められています。こうした未来を生きていく子どもたちには、お互いの「ちがい」を理解し、多様性を受け入れ、共生していく力が求められています。
2021年8月21日にパラアスリートとZoomを介して大人と子どものグループである「ファミリー」が一緒に「ふつう」や「ちがい」を考えるオンラインイベント「あすチャレ!ファミリーアカデミー」が開催されました!障がい者である講師とゲームやクイズを通して、多様性と共生社会を学ぶ60分です。
授業の様子をレポートしましたので、ぜひご覧ください!
SDGsの目標11として掲げられている「住み続けられるまちづくりを」。2030年までに、女性や子ども、障がい者、高齢者など、すべての人を取り残さない持続可能なまちづくりが求められています。
こうした未来を生きていく子どもたちには、お互いの「ちがい」を理解し、多様性を受け入れ、共生していく力が求められています。
2021年8月21日にパラアスリートとZoomを介して大人と子どものグループである「ファミリー」が一緒に「ふつう」や「ちがい」を考えるオンラインイベント「あすチャレ!ファミリーアカデミー」が開催されました!
障がい者である講師とゲームやクイズを通して、多様性と共生社会を学ぶ60分です。
授業の様子をレポートしましたので、ぜひご覧ください!
イベント情報
◆実施日
2021 年8月21日(土)11:00~12:00
◆開催の背景
公益財団法人日本財団パラリンピックサポートセンター(以下、パラサポ)では、パラスポーツを通して、誰もが活躍できるダイバーシティ&インクルージョン社会の実現を目指しています。
今回のイベントでは、大人と子どもが一緒に「ふつう」や「ちがい」を理解し、視野を広げることで、よりより社会を作るためのきっかけを提供しています。障がい当事者である講師からリアルな経験談を直接聞くことで「ちがい」を身近に感じ、障がいの有無に関わらず、お互いに支え合いよりよい社会を目指します。
◆登壇者
・山本 恵理(やまもと えり)
車いすユーザーでパラ・パワーリフティングの現役アスリート。女子55kg級では日本記録を持つ。ニックネームは「マック」。パラサポでは、「あすチャレ!Academy」や「あすチャレ!ジュニアアカデミー」のプログラム開発や講師を担当。年間約100回もの講演やイベント出演など、精力的に活動を行う。
撮影:西岡浩記
◆プログラムの特徴
大人と子どもが一緒になって、障がい当事者講師の体験談を聞いたり、ゲームやアクティビティを行ったりすることで、多様性や共生社会について、考えるプログラムです。今まで聞けなかった疑問や聞くことをためらっていた質問にも、障がい当事者講師が直接答えることで、より深く「ちがい」について認識していきます。
プログラムの最後には、ファミリーが一緒に取り組めるあすへのチャレンジ「あすチャレ!宣言」をファミリーごとに考えます。多様性や共生社会に向けて、自分たちができることを見つけられる60分です。
あすチャレ!ファミリーアカデミー あなたの「ふつう」って本当にふつう? をレポート!
まずは講師の自己紹介から!山本恵理さんは重量挙げのパラアスリート!車いすユーザーが、上半身の力だけを使って、重いものを上げる!という競技です。
ニックネームの由来は「笑顔マックス!パワーマックス!」の「マック」です。ニックネームの通り、明るくパワフルな様子でセミナーを進行していきます。
参加ファミリーは、チャットの練習やオンラインキャッチボールなど、ウォーミングアップから!マックさんの明るい雰囲気にファミリーのみなさんの緊張もほぐれた様子です。
「ふつう」の世界
日常会話でもよく聞かれる「ふつうって…」という言葉。何気なく使ってしまう言葉ですが「ふつう」って何だろう?ということを深く考えてみることから始まりました。
【ワーク】あなたがマックさんの先生だったら?
「ふつう」世界を考えるにあたって、マックさんの子どものころのお話を聞きました。
マックさんは、二分脊椎症のため生まれたときから、周りの人と少し違っていました。それでも自分では「ふつう」と思っていたそうです。
マックさんは、近距離なら補装具を使って歩けるため小学校へはランドセルを背負って登校していましたが、一つ問題がありました。身体を大きく振るように歩いていたため、ランドセルから荷物が出てしまったりと歩きにくいのです。そこで、マックさんのお母さんは学校の先生へ相談しました。
「うちの子は、ランドセルだと歩きにくいので、他のカバンに変えてもいいですか?」
ここで問題です!
「皆さんが先生だったら、何て答えますか?」
参加者はファミリーごとに相談します。子どもたちも積極的に発言している様子がうかがえます!
参加ファミリーからはこんな意見がありました!
・ちゃんとした理由があるし、勉強道具が入れられるなら、他のカバンでもいいと思いました!
・カバンを変えるのはOKだと思います。ただ、他の子とあまり変わらないようにショルダーバッグを背負うなどして、ランドセルに似せるといいと思いました!
参加ファミリーからはカバンを変えてもいいという答えが多く出ましたが、マックさんの小学校の先生は何と言ったのでしょうか。
先生の答えは「ダメです」でした。
理由は「みんなと合わせてほしい」ということでした。
参加ファミリーと先生、答えは違うけれど、どちらも自分の「ふつう」を基準に考えています。
見方が変わることで「ふつう」が変わるということを気づかせるワークでした。
「ふつう」の世界は「ちがい」だらけの世界
例えば、身長が違うと見えるものが違います。マックさんは身長が120cm程。コンビニのアイス売り場では手前のものが見えません。お菓子売り場でも高いところのものは取れません。大人と子どもでも身長がちがうから、見えているものがちがいますね。
物理的な視点が変われば、視点は大きく変わります。それだけでなく、年齢、経験、役割や考えによってものの見方が変わり「ふつう」も変わります。
「自分の「ふつう」は自分だけのもので相手の「ふつう」とは同じものではない」ということを子どもたちにも分かりやすく伝えてくれました。
「ちがい」の世界
「ふつう」の世界の次は「ちがい」の世界について考えます。
参加ファミリーとワークを通して考えます。
【ワーク】自分とマックさんのちがいは?
1分間でマックさんと自分とのちがいを紙に書き出します。
合っていても間違っていても、想像でもOKです。
スタート!の合図とともに一斉に書き出していくファミリーたち!
次に、自分とマックさんのおなじところも書き出します。
それぞれの数を比べると「おなじ」ところが多かったファミリーよりも「ちがい」が多いファミリーの方が多数という結果に。
私たちは共通点よりも人との「ちがい」や、自分や相手の弱点に目が行きがちということが分かりました。
参加ファミリーから出た意見はこちらです。
「ちがう」ところ
・性別
・年齢
・職業
・車いすに乗っていること
・眼鏡をかけていること
・リストバンドをしていること など
そして、3つ目の質問はマックさんが得意そうなことを想像してみよう!です。
・車いすの操作
・話すこと
・重いものを持ち上げること
・手の感覚
・プレッシャーに強そう
この質問で「ちがい」は強みになることも分かりました!
マックさんからは「ちがい」を活かして得意に変えていくことを考えることが大切というメッセージが伝えられました。
【ゲーム】家の中から探してこようゲーム
視覚障がい者との「ちがい」を体験できるゲームです。
ファミリーで協力して正解を目指します!
出されたお題に対して、ものの名前を言わないで、形や色や手触り、使い方などを説明します。
もう一人はお題を見ずに、説明だけで家の中からお題のものを探して持ってくるゲームです。
説明者は身振りや手振りも交えてそれぞれ工夫して伝えています。
視覚に障がいがある人は、においや触感、音などで多角的に感じることができます。
目が見えない「ちがい」があっても、その分様々な感じ方ができるのです。
質問タイム!マックさんに質問してみよう!
質問タイムになると、子どもたちからさまざまな質問が飛び出しました。
その一部をご紹介します。
参加ファミリー1:小学生の時は歩いていたということですが、いつから車いすに変えたんですか?
マックさん:小学校は徒歩5分のところにあったので、歩いて行けました。中学・高校と行動範囲が広がるにつれて、車いすで移動するようになりました。今では車いすが足となっています。
参加ファミリー2:私は料理が好きでするのですが、キッチンにギリギリ届くという感じです。マックさんは私よりも身長が低いのですが、料理はどうやってやってますか。
マックさん:身長が135㎝しかないので、キッチンで切ったりするのが難しいので、ダイニングテーブルなど低いテーブルに持ってきてやっています!その他は、高い椅子を持ってきたり、梯子をつかったりして料理しています。
参加ファミリー3:ずっと座ってて痛くないですか。
マックさん:痛くないです。実はとても高級なクッションに座っているので、全然痛くないです。ただ、夏は暑くなるので、時々違う椅子に座ったりします。
参加ファミリー5:車いすに乗ってて、良かったり辛かったりすることはありますか。
マックさん:良かったことはすぐにマックのことをみんなに覚えてもらえることです。
辛かったことは、歩きスマホをしている人にはなかなか気づいてもらえず、直前によけたりするので、もっと早く気づいてほしいな、と思います。
あすチャレ!宣言について考える
最後に明日からファミリーでチャレンジすることについて考えます。
発表されたあすチャレ!宣言の一部をご紹介します。
・マイナスをプラスにできるポジティブシンキングを取り入れる!
・近くに住んでいるおじいちゃんおばあちゃんたちと、困っていそうならお互いに声をかける
ほとんどのファミリーがしっかり「あすチャレ!宣言」を考えられていました!
発表していないファミリーも画面越しに宣言を見せてくれました。
最後はマックさんと参加ファミリーの記念写真です!
提供:日本財団パラリンピックサポートセンター
参加者の感想
和やかな雰囲気で行われた今回のイベント。イベント終了後の参加者の方々の感想を一部をご紹介いたします。
大人の参加者1:パラリンピックが始まるタイミングで参加でき、自分の普通、障がい者の普通、他人の普通を子供と考えるきっかけになりました。
色んな種類の多様性があるので、『普通はね…』の言葉で片付ける事なくたくさん経験をして対応出来る柔軟さを身につけていきたいです。
大人の参加者2:対面ではなくオンラインセミナーだったが、画面上でキャッチボールをしたり、要所要所では画面が切り替わり説明を行うなど、楽しくわかりやすく工夫されたセミナーだったなと感じました。
積極的に発言できる雰囲気づくりができていて、親子で楽しく参加することができました。
参加のきっかけは、人それぞれ。多様性について知りたい方や、「ふつう」について知りたい方、障がい者の人と話をしてみたかったなどのご意見もありました。イベントの参加することで、新たな視点を得たり、より理解が深まったなどファミリーごとに、これからの毎日で取り組める何かをつかめたのではないでしょうか。
みらいいからのインタビュー
イベントを終えたマックさんにインタビューを行いました。
みらいい: 子どもたちがそれぞれの「ちがい」を理解し、多様性や共生社会を身近に感じられるようなるためには、どんなことができると思いますか?
マックさん:「人のちがいを認めよう」といわれても、難しいと思います。だからこそ、まずは自分のちがいに気づいてほしいと思います。
誰でも人との「ちがい」を指摘された経験があると思うのですが、そんなときに「ふつう」にしなきゃと思うのではなく、どうやったらそれを活かせるかな?と考えてほしいと思っています。
他の人のちがいを認める前に、まずは自分のちがいを実感して、それをどうやったらプラスにできるんだろうということを考えてもらえたら嬉しいです。
子どもたちには、まず自分のちがいにフォーカスして、それをどうやって活かしていけるかな、と考えることがその先にある共生社会に繋がると思っています。
みらいい:今回のイベントでもファミリーでゲームなどを行っていましたが、他にも身近にできる具体的な取り組みがあれば教えてください。
マックさん: 私がファミリーアカデミーで「ちがい」や「ふつう」についてお話ししているのは、私自身「ちがい」が分かりやすいからという理由があります。
ちがいが見えやすい障がい者などに話しかけて、困っていることや得意なことなどをどんどん聞いてほしいと思います。はっきりとしたちがいがある人がどんな人なのか、ということを知るのが共生社会への第一歩だと思います。
地域にいる目に見えてちがいがある人と積極的にコミュニケーションをとってほしいと思います。そういった人に話しかけるのは、子どもたちだけでは難しいと思うので、ぜひ大人と一緒にファミリーで実践してほしいなと思います。
みらいい:子どもたちがこれからの時代を生きていくために、大切なことや必要な力はどんなことだとお考えになりますか?
マックさん:今日のイベントに参加してくれた子どもたちにも見えましたが「柔軟な心」が大切だと思います。自分と違う意見や受け入れられないことでも、それを責めずに、そこに「いる」ということを認められる柔軟な心を持ってほしいな、と思います。
そういう柔軟な心がこれから必要なスキルだと思っています。
みらいい:お忙しいところ、ありがとうございました!
多様性社会・共生社会への第一歩
マックさんの明るく元気な人柄も相まって、楽しく「ふつう」と「ちがい」について考えることができた60分でした。これからの多様性社会、共生社会を生きていく子どもたちにとってはもちろん、大人にとっても自分自身の「ふつう」と「ちがい」に気づいた時間になったのではないしょうか。
こちらのレポートをもとに、ご家庭で「ふつう」や「ちがい」について話し合ってみませんか。
みらいいでは、子どものみらいを切りひらくメディアとして、子どもたちの可能性への支援や子どもたちが学ぶ機会の提供を行っています、また、未来に向けたSDGsに関するイベントや子どもたちが取り組むイベントやワークショップへの協力や取材を行い、その様子をみらいいで紹介しています。
企業・団体または個人の方からの取材のご依頼もお待ちしております。