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スクラッチとは?小学校のプログラミング教育における実態など

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スクラッチとは?小学校のプログラミング教育における実態など

2020年小学校で必修化されたプログラミング教育について調べていると、スクラッチという言葉が出てきます。
スクラッチとは何のことなのか。また、スクラッチと小学校でのプログラミング教育の関係について紹介したいと思います。

2020年小学校でもスタートのプログラミング教育について調べていると、スクラッチという言葉が出てきます。スクラッチとは何のことなのか、また、スクラッチと小学校でのプログラミング教育の関係について紹介したいと思います。

小学校のプログラミング教育にもその名をみるスクラッチとは


 


プログラミング教育に関係するスクラッチとは、なんのこと?

スクラッチという言葉を聞いて何を思い浮かべますか?
宝くじの一種、DJのパフォーマンス手法のひとつ、絵画の手法のひとつ、この単語のみだと聞き手によって浮かぶイメージは様々かもしれません。
ここで紹介するスクラッチは、小学校のプログラミング教育にも使われ始めているスクラッチという名前のビジュアルプログラミング言語です。おもちゃのブロックを手で動かして遊ぶかのように、ブロックと呼ぶスクラッチのプログラムに必要な部品のイラスト化されているものをマウスで動かしてプログラミングをします。
数多くの言語に対応していて日本語にも対応しています。

プログラミング教育に関係するスクラッチはどこが作ったもの?

スクラッチ(Scratch)は、MITメディア・ラボのライフロング・キンダーガーテン・グループによって開発され無償で公開されているビジュアルプログラミング言語です。特に8歳~16歳向けにデザインされていて、マウスによる操作が主になっているので、キーボード操作が不慣れな人でも利用しやすくなっています。MITは、アメリカのマサチューセッツ工科大学です。詳しくは http://scratch.mit.edu をご参照ください。
なお、開発元へのリンクは、https://www.scratchfoundation.org/を参照してください。

小学校でのプログラミング教育にスクラッチはどのように導入されているのか

 

小学校のプログラミング教育でのスクラッチの導入事例

文部科学省、総務省、経済産業省が、官民が一体となって未来を担う子供たちにプログラミング教育を普及・促進するため立ち上げた「未来の学びコンソーシアム」による、「小学校を中心としたプログラミング教育ポータルサイト」に、小学校でのプログラミング教育にスクラッチを導入している事例が複数紹介されています。
例えば、学習指導要領に例示されている単元に用いたものには、正多角形をプログラムを使ってかこうがあり、教育課程内で各教科とは別に実施したものとしては、知的障害のある児童生徒のクリエイティビティを拡大するプログラミング教育実証などがあります。

小学校のプログラミング教育ではスクラッチで何をする?

上記のプログラミング教育ポータルサイトに、スクラッチを使って行ったものを含めたくさんの事例が紹介されています。
 
紹介されている事例をみてみると、大きく分けて以下の2つがありました。
(1)指導者は担任教師など、参加人数に対して少なく従来の授業と同等のスタイル
(2)メインの指導者の他に、メンターと呼ばれる指導者が児童のグループに入るスタイル
です。
 
それぞれスクラッチを使ってどのような学習が深められているかみてみると、(1)の場合はプログラミング教育の中でも、論理的思考やアルゴリズム理解を深めている印象です。
 
例えば、「学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を指導する中で実施するもの」としての事例に、小学2年生の音楽でくりかえしをつかってリズムをつくろうという単元にプログラミング教育を組み合わせたものがあります。
 
まずはスクラッチを使わず(アナログ環境で)手でリズムを打ってみて、音楽も扱えるスクラッチ上でも同じようにリズムカードを組み合わせて音を出し、スクラッチでの音を模範としつつ楽しみながら正確なリズムで打つ練習を重ねていき、音楽にもある反復をスクラッチ上ではどのように表現するか、繰り返しのプログラミングを体験できる内容です。
 
(2)の場合は、メンターが関わることにより協同でテーマに取り組み、異年齢間でのコミュニケーションの創出も行われています。事例には「学校を会場とするが、教育課程外のもの」が多く、世界に発信!地域密着プログラミング教育による新潟市PRプロジェクトや、発達段階(発達障害も含む)に合わせた異年齢協同プログラミング教育モデルなどがあり、これらの実施が、1回限りで終わりではなく、それ以後の継続した活動や他の地域への展開も考えられているものです。
 
なお、(2)については総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」に係る提案募集があり、この公募要領に、プログラミング教育の指導者不足を補う意図が感じられる、プログラミング指導者(メンター)の育成が入っていることも大きく関わっているようです。

小学校でのプログラミング教育に使われるスクラッチの状況

小学校でのプログラミング教育にスクラッチが選ばれる理由は

小学校のプログラミング教育にスクラッチが選ばれるのには、どのような理由があるのでしょうか。スクラッチの特徴に、なぜ選ばれるのかという問いの答えがあるのではないかと思います。
 
まず、スクラッチは先にお伝えしたように、MITメディアラボで開発された無償で利用できるビジュアルプログラミング言語です。つまり、導入コストを抑えることができます。
 
2020年のプログラミング教育の必修化を目前にした時点での、その他の特徴としては、2019年1月2日に正式リリースされた新バージョンのScratch3.0からはタブレットとパソコンのブラウザ上で動作させることが可能で、動作はオンライン上の使用だけでなく、ダウンロード版にあたるScratchデスクトップを使うことでオフライン(インターネットへの接続なし)でスクラッチでのプログラム作成や、そのプログラムの実行が可能ということが挙げられます。
 
オンライン上でプログラミングしたものは、世界中のスクラッチ利用者に公開することができ、公開されているプログラムは他の利用者が改造等して使うこともできます。学校でもタブレットの導入が進んできている今、タブレット上での利用も可能という選択肢や、ダウンロード版という、生徒が利用するときのネットワークセキュリティについても制限のある中で個々のマシン内での利用もできるというのも選ばれるポイントでしょう。
 
また、パソコンやタブレットのOSも、Windows、macOS、Android、iOSとユーザーのスクラッチ利用環境も柔軟に選べます(スクラッチのバージョンによってはLinuxでの利用もできます)。

プログラミング教育でスクラッチを使うことのデメリットはあるか

スクラッチには、無償で利用できる、オンラインでもオフラインでも利用できる、利用機器はタブレットもパソコンも可、利用環境OSも複数に適合という様々な優位な特徴があります。
 
では、いくつもあるビジュアルプログラミング言語のなかで、スクラッチを使ったプログラミング教育を進めることによるデメリットはないのでしょうか。
ビジュアルプログラミング言語の対になる言葉として、従来のプログラミング言語はテキストプログラミング言語と呼ばれるようになりました。(ただし、対応させるための言葉であって、プログラミングの世界でわざわざテキストプログラミング言語と呼ぶことはほぼありません。)
 
テキストプログラミング言語は、マウス操作ではなく、主にキーボードからの文字入力によりコーディング(プログラムを記述する作業)をします。タブレットも主流となってきた昨今、タイピング(キーボードで文字入力)をするということが億劫な子も少なくありません。そのため、スクラッチを通してプログラミングが楽しいと感じていても、もっと本格的にプログラミングをやりたいと思ったときに、タイピングがハードルになる可能性があります。
 
その他のデメリットとしては、スクラッチがブロックを用いたビジュアルプログラミング言語であるゆえ、テキストプログラミングによって書かれたプログラムの内容との差や、スクラッチでの見た目とは違うテキストプログラミングでの記述方法の差などを大きく感じられるため、次のステップへ進もうとしたときにスクラッチへの習熟がテキストプログラミングへのハードルになってしまうことがあります。
 
スクラッチを使えるようになった先に、仕事としてのプログラミングをする道が(スクラッチの指導者という選択肢の他に)ほぼないということも挙げられそうです。ただし、プログラミング教育では、「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」にも書かれているように、「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではないので、小学校でのプログラミング教育においては、デメリットとは言いにくいかもしれません。

おわりに

スクラッチは、関連書籍が複数でていたり、NHKでもスクラッチを使ったプログラミング教育の番組が放映されていたりと、数年前よりもぐっと身近なものになってきました。
 
そろそろ子どもをプログラミング教育に触れさせたいな、と思ったとき、既にパソコンやタブレットが手元にあるのならば、スクラッチ(Scratch)を使ってみるのも良いと思います。ビジュアルプログラミング言語ならではの、チャレンジのしやすさもあるので、親子で取り組み始めることもできるのではないでしょうか。

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