清水建設が挑戦するSDGs!富里市の八ツ堀のしみず谷津の休耕田を再生するプロジェクト
全社をあげてSDGsに取り組む清水建設株式会社が千葉県富里市で実践する活動を紹介します。
みらいいでは、清水建設の定月さんに、活動の背景や様子をインタビューしました!さらにみらいいと清水建設が共同で取り組むプロジェクトもご紹介します。
千葉県富里市 八ツ堀のしみず谷津 (提供元:清水建設)
昨今、多くの企業が、SDGsの達成を目的とした取り組みを加速させています。それは、SDGsが、自社の既存事業の拡大や新規事業の開発につながるということにとどまらず、SDGsの達成に貢献することが、企業の社会的責任としてみられるようになってきていることにもよります。このように、企業は事業の成長と社会への貢献の双方を実現していく必要があるのです。
そのような、自社事業とSDGs達成の両立を目指した取り組みとして、清水建設株式会社(以下、清水建設)が千葉県富里市で実践する「八ツ堀のしみず谷津再生プロジェクト」があります。みらいいでは、全社をあげてSDGsの達成に取り組む清水建設の定月さんに、活動の背景や様子をインタビューしました!
今回の記事では、インタビューの様子やみらいいと清水建設が共同で取り組むプロジェクトについてもご紹介しています。
定月歩今(さだつきあい)
2014年清水建設株式会社入社。土木工事の施工や設計を経て、2021年度より環境経営推進室グリーンインフラ推進部所属。八ツ堀のしみず谷津の取り組みを通して自然環境の重要性を実感しているものの、建設の仕事も大好きなので、工事案件にどうグリーンインフラを導入するか、日々頭を悩ませている。
SDGsに真摯に取り組む清水建設とは?
清水建設は、建物、道路、ダムなどを主に作っている総合建設会社です。
「子どもたちに誇れる仕事を。」をミッションに掲げ、再生可能エネルギー事業や「グリーンインフラ+(PLUS)」という自然の恵みを地域全体に還元する取り組みをされています。
他にも、SDGsに関連する取組みとして青少年や一般の方向けの「シミズ・オープン・アカデミー」、東京木工場が全国で行っている「木育(もくいく)」などがあり、次世代を担う子どもたちの教育に取り組んでいます。
清水建設が取り組むSDGsについて
清水建設のSDGs!社員が家庭で実践するSDGsが面白い!
未来を生きる子どもたちのため
Hiroーどのような取り組みなのでしょうか?
定月さんー千葉県富里市にある、千葉県北部でよく見られる谷状の地形である”谷津”において、放棄された休耕田を多機能な湿地グリーンインフラ※1として再生するプロジェクトです。
具体的には、荒廃した休耕田を湿地として磨き直すために、樹木や草が生い茂っているところを伐採して整え、人力で湿地の手入れをしたり、生態多様性の向上を目指した生態調査や水質調査、効果実証、そしてこうした自然再生活動を継続していくことの重要性や自然が持つ機能への理解を深めてもらうための人材育成などに取り組んでいます。
注1:グリーンインフラとは、自然の持つ多様な機能を活用することで様々な社会問題を解決し、持続可能なまち、地域の実現を目指す考え方
Hiroー清水建設だけで取り組んでいるんですか?
定月さんーいえ、清水建設だけではなく、国立環境研究所、東邦大学、NPO法人アースウォッチ・ジャパン、NPO富里のホタル、市民ボランティア おしどりの里を育む会など、企業の枠を超えて色々な人と一緒に取り組んでいます。
Hiroーそれだけたくさんの方が関わっているんですね!
この取り組みを始めた理由はなんでしょうか?
定月さんー全社として持続可能な社会の実現を考えていて、そのために「SHIMZ Beyond Zero 2050」を環境ビジョンとして掲げています。
SHIMZ Beyond Zero 2050 HPより引用
『私たちが築きたいのは、ゼロの先にあるプラスの世界。
今を生きる人々のために、未来を生きる子どもたちのために。
自社の活動による負の影響をゼロにするだけでなく、顧客や社会にプラスの環境価値を提供したい。
シミズグループは目指すべき持続可能な社会を「脱炭素」「資源循環」「自然共生」の
3つの視点で捉え、イノベーションによる豊かな環境価値の
創造に取り組んでまいります。』
このビジョンで目指す「自然共生社会」という視点から、八ツ堀のしみず谷津では、グリーンインフラを導入し持続可能な社会の実現に貢献しようと取組みを進めています。
Hiroー「未来を生きる子どもたちのために」やっていることなのですね!
清水建設のような大企業がこのような想いで取り組んでいて、とても心強いです!
大きな変貌を遂げた”しみず谷津”
Hiroーここから具体的な現状の取り組み状況について教えてください。
定月さんー我々としては、この取り組みを、郊外型グリーンインフラのモデルケースにしたいと考えていますが、この郊外における”谷津”という場所の負の側面がいくつかあります。
① 谷津周辺の土地利用の改変や都市化により、自然な水循環が不健全な状態になり、谷津の乾燥化や樹林化が進み、生態系や景観が荒廃する
②水が湧くという環境が持つ土地本来のポテンシャルをいかせずに放棄されている
③少子高齢化、人材・情報不足により、維持管理が難しい
こうした側面に対して、我々は検討や取り組みを進めています。
Hiroー不健全な水循環というのは具体的にどのようなことなのでしょうか?
定月さんーこの図のように、谷津の湧水というのは、この台地面に雨が降り、それが土中に浸透されて、台地の縁で地表に現れ谷底面を流れます。
その湧水のおかげで生き物が生息できる湿地環境ができていたり、雨が降ってゆっくりと土中に染みていく自然の水循環が保たれることで、河川などの氾濫の軽減にも役立っています。
(出典:自然とかかわり豊かに暮らす 北総地域における里山グリーンインフラの手引き 【谷津編】 (chikyu.ac.jp))
それが、他の多くの谷津と同じように、いま取り組んでいる”谷津”でも、最初は乾燥が進んでいる状態で樹林化していて、湧水が出ても流れが滞っていました。
この乾燥していた谷津が、伐採して整えたり、人力であぜや水路を再整備したりしたことで、現在ではこのような湿地になり、生息する生き物にも変化が見えてきています。
① 再生を始める前の谷津
②再生が進み湿地が広がった谷津
(提供元:清水建設)
Hiroーおおお!これはすごい変貌ですね!
あと湧水が出る仕組みを、初めて知りました!自然ってすごいですね...!
定月さんーすごいですよね!
また、「ポテンシャルをいかせずに放棄されている」という点では、谷津は狭い地形が多く、大きな重機が入れないこともしばしばあり、大規模な稲作ができないので、使用されなくなり、維持管理も難しいため「放棄地」になりがちということが見えてきました。
Hiroーこの谷津が放棄されたのは、様々な理由があったのですね。
「のこりもの」から「たからもの」へ
Hiroーまた「人材育成」に関してはどのようなことをしていくのでしょうか?
定月さんー富里市では、NPO富里のホタルやおしどりの里を育む会、西廣研究室の方々が先駆的に谷津再生の取り組みを積み重ねています。昨年の秋に茶話会を行ったときに、谷津の豊かな恵みを子どもたちの世代に引き継いでいきたいとのお話が印象に残っています。谷津再生の機運は、現在、子育て層や小学生など若い世代にも広がってきています。
こうした地域で、先駆者の皆さんに学びつつ、民間企業として谷津の再生に関わり、活動を継続していくことで、より多様な人が谷津の魅力に気づき、交流する場を作っていけるのではないかと考えています。今回、特に若い世代を巻き込んでいくということで、「グリーン秘密基地探求プロジェクト」を一緒にスタートさせるみらいいの皆さんに期待しています!
自然体験活動をたくさんした青少年は「課題解決能力や豊かな人間性など、生きる力」があると言われていますが、体験していない人は取り残されてしまい「放棄地」つまり「のこりもの」になるのではなく、谷津という場所と同じように、生きる力を身につけ「たからもの」になるといいなと考えています。
Hiroー楽しみですね!
定月さんー自然体験がゼロの私自身、この休耕田再生の取り組みの前は、木は木でしかなくて、草は木ではない植物という認識でしたが、やっと自然に対しての無関心から脱却してきました。青少年たちや、様々な方同士が、このしみず谷津で交流をしたり、この場所を通して、無関心から脱却したりするきっかけになったら良いなと考えています。
Hiroーありがとうございます!小学生やその保護者などがきっかけになる、良いプロジェクトにしていきます!
定月さん今回はお話しを聞かせていただきありがとうございます!
定月さんーこちらこそありがとうございます!
今回は清水建設の定月さんにお話を伺いました!
この休耕田の再生の調査などに私も何度か参加させていただいておりますが、どんどん乾燥していた谷津が、湿地になり、最近ではアマガエルの姿が多数確認できたのと、シュレーゲルアオガエルの卵、アズマヒキガエルの卵とオタマジャクシが確認できました!
キジやアオサギ、フクロウなどいろんな野鳥が来てくれているようです!
着々と再生が進んでいる "しみず谷津”には今後も目が離せません!
この取り組みに参加したい!取材したい!などお考えの方はぜひ以下からお問い合わせください!
清水建設お問い合わせ窓口
みらいいとの共同プロジェクトがスタート!
みらいいと清水建設との共同プロジェクト「グリーン秘密基地探求プロジェクト 2022 〜ワクワク×自然編」が始まりました。八ツ堀しみず谷津の休耕田やそのまわりを利用して、「自然に優しい」「ワクワク」をテーマに子どもたちが自由に発想をして、自分だけの秘密基地を1か月間かけてつくるプロジェクトになります。
プロジェクトの概要はみらいいでご紹介しています。
プロジェクトのプレスリリースはこちら
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みらいいひらめきラボで「グリーン秘密基地探究プロジェクト2022~ワクワク×自然編~プレゼンテーション」を開催予定!
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