唐揚げが石鹸に!?本質的な循環型社会を創り出すプロジェクト
「第13回からあげグランプリ®授賞式」で発表された『からあげせっけんプロジェクト』。スーパーやコンビニ、唐揚専門店から出る使用済みの植物油を高品質な石鹸に変え、小学校などの公共施設で使用してもらうというもの。
このプロジェクトを主導する株式会社リンクスの代表取締役 片渕さん、専務取締役 岩崎さん、一般社団法人唐揚協会専務理事八木さんにお話しを伺いました。
4/13(水)に一般社団法人日本唐揚協会による日本で一番うまい唐揚げ屋さんを決める「第13回からあげグランプリ®授賞式」が目黒区のホテル雅叙園東京で開催され、厳かな雰囲気の中全国から名だたる唐揚げ店主が一同に集まりました。
その壮大なイベントで、あるプロジェクトの発表がありました。
その名も『からあげせっけんプロジェクト』。
このプロジェクトは株式会社リンクスが日本唐揚協会の協力を得て、スーパーやコンビニ、唐揚専門店から出る使用済みの植物油を高品質な石鹸に変え、回収した地域の小学校などの公共施設で使用してもらうというもの。
今回は、「これぞSDGs!」というこの素晴らしいプロジェクトを主導する株式会社リンクスの代表取締役 片渕さん、そして専務取締役 岩崎さん、一般社団法人唐揚協会専務理事八木さんにみらいい編集部のRikuがお話しを伺いました。
(左から岩崎さん、片渕さん、八木さん)
6年前から「持続可能な社会」に目を向けていた先見の明
-まず株式会社リンクスの事業内容を教えてください。
片渕さん:リンクスでは飲食店などから出る廃油を回収し、それをバイオディーゼル燃料として再利用するという事業を行っております。いまだに多くの飲食店さんは廃油を捨てている現状がありますが、そうすると河川や海の汚染、大気汚染にも繋がり環境を悪化させてしまいます。
そこで我々がその廃油を回収し原材料として使用できるよう加工することにより、飲食店は経済的負担が減り、地球環境も良くなるという好循環が生まれます。
-素晴らしいですね!そもそも廃油回収ビジネスを始めたきっかけは?
片渕さん:実はこのリンクスという会社は6年前に買収したんです。当時も事業内容は同じでしたが、会社の業績は赤字でした。でも「この事業は必ず世の中に必要な事業になる」と信じて一歩ずつ今日まで歩んできました。
(油を回収し貯蓄タンクに保管し、ろ過をする)
-「廃油を原材料とする」というところを詳しく教えて下さい。
岩﨑さん:現在世界で最も生産されている植物油はパーム油です。そして日本ではほとんどの植物油が輸入によってまかなわれています。日本にいるとなかなか気づきませんが、パーム油の原材料であるアブラヤシ栽培の際にされる森林の「野焼き」これが世界では以前から問題提起されているのです。
植物油と聞くと揚物など飲食に使用するイメージを持つ方がほとんどだと思いますが、実は日本全体のパーム油の約20%は非食用、つまり洗剤や日用品の原料として使用されています。
「この20%の原材料を国内で破棄する植物油から確保することができれば新たな循環型社会の提案ができるのでは」と考え始めたところから具体的に我々のミッションが明確になっていきました。
これぞ持続可能で循環型社会を確立させるサイクル
-今回のプロジェクトは具体的にどのようなものなのですか?
岩﨑さん:まず、日本唐揚協会様が関係する唐揚専門店をはじめとする大手スーパー、コンビニエンスストア、飲食店様などから食廃油を回収し、中間処理を経た後に特殊な技術を用いて高純度な脂肪酸を抽出、それを原材料として石鹸を製造して回収した近隣の小学校や公共施設に寄付をするという流れです。
※通常、石鹸は寄付ではなく販売している
この寄付するリサイクル石鹸もメーカーが環境に配慮され生態系へのダメージを極力なくしたいという思いで作られている、無添加で生分解性の高い非常に高品質なものです。
-すごい…!とても綺麗というか、持続可能なサイクルですね。このサイクルを作るのは簡単ではないですよね?
岩﨑さん:はい。これは食廃油から脂肪酸を抽出する技術を、石鹸メーカーであるエスケー石鹸(株)様と国内屈指の油脂メーカー様が確立させていること、また回収に関わっている皆さんの協力があるからこそ成り立っています。
2025年までに全国展開へ
-このプロジェクトに懸ける想いを教えてください。
片渕さん:正直、石鹸をすべて寄付するというのは弊社にとっても大きな痛手になりますが、今回日本唐揚協会さんと一緒に循環型社会を全国で作っていきたいという想いで動き出しました。
先だってのからあげグランプリでも発表がありましたが、唐揚専門店が年々増加しているデータや、イベントの注目度や盛り上がりを見ても「からあげ」の人気は右肩上がりです。唐揚の消費が増えれば廃油も必然的に増えます。
各地域の飲食店から出る廃油を回収し、それを石鹸に変え、その地域の小学校などに配られる。これこそ持続可能、循環型社会の確立だと思うのでこのプロジェクトを早急に広めていきたいと思っています。
-これからの目標は?
片渕さん:2025年までに全国展開です。ハードルは高いですが。この目標を達成するには我々1社だけでは難しいので、あらゆる企業や自治体とアライアンスを組みながら、今後は各地域で飲食店のみならず家庭から出る油を石鹸に生まれ変わらせることで「私たちが出した食廃油がその地域の小学校で使われる石鹸になる」という循環型社会を作っていきたいです。
-素晴らしい目標ですね!
廃油が石鹸になり、小学校で使えるということに意義がある
-それでは今回のプロジェクトに後援される日本唐揚協会 専務理事の八木さんにもお話しを伺います。
まず日本唐揚協会としてなぜ今回のプロジェクトに協力しようと思ったのでしょうか?
八木さん:日本唐揚協会は過去にも3R(リユース・リデュース・リサイクル)の観点で環境省とともに地球環境に配慮した取り組みを行ってきました。
その中で油の回収(リサイクル)も取り組みの1つではあったのですが、
正直社会貢献度が高そうに見えて関連会社が儲かるような仕組みが多く、協会として 取り組むのが難しいかなという印象が強かったです。
しかしこのプロジェクトは唐揚げ店舗さんから出た廃油が石鹸になって近隣の地域の小学校で使えるものになるというサイクルが素敵だなと感じ、それじゃあ一緒にやりましょうということになりました。
-なるほど。このプロジェクトを今後どのように広めていきたいですか?
八木さん:どの唐揚げ屋さんも廃油の処理は必ず行う中で、買い取ってもらった方が良いお店もありますし、環境の為にこういったプロジェクトにご賛同頂ける加盟店さんもいらっしゃると思います。協会としては中立ではありますが、このプロジェクトは社会的意義があるので、選択肢の1つとして持ってもらいたい。そのための啓蒙は続けていきます。
-素晴らしいですね!このプロジェクトが広まっていき、全国の小学校に石鹸が届くのが楽しみです!
今回のお話を聞いて、そもそもSDGsというのは「社会」「経済」「環境」の3要素、全てを考えて活動することを前提としていて、それを達成することに苦戦している企業や自治体が多い中で、このプロジェクトは間違いなく全てを達成していると感じました。
だからこそ持続可能なものであり、必要とされ続けるもの。
ぜひこの活動にご興味をもった企業や自治体の方々は、下記URLからお問い合わせしてみてください。
・からあげせっけんプロジェクト詳細
https://linx-shonanoil.com/lp/
・日本唐揚協会
https://karaage.ne.jp/