【2022年有識者会議の審議まとめ】ギフテッドの子どもへの新たな施策とは?
2022年7月25日にギフテッドの子どもに対する学校での指導・支援のあり方に関して有識者会議が開かれました。
その審議の内容をこちらで解説します。
2022年7月25日にギフテッドの子どもに対する学校での指導・支援のあり方に関して有識者会議が開かれました。
その審議の内容をこちらで解説します。
ギフテッドの子どもたちだけではなく、全ての子どもたちが多様性を認め合い、高め合える学校教育環境の中で、それぞれの資質・能力を伸ばしていけるようにこれからの日本の教育についてまとめられています。
ギフテッドとは
文部科学省科省では、言語、数理、科学、芸術、音楽、運動等、様々な領域で高い能力が見られる子どもを「特異な才能のある児童」としています。
この記事では「特異な才能のある児童」を「ギフテッド」とします。
【ギフテッド特集】いま話題!"ギフテッド"をあなたは知っていますか?
ギフテッドとは?ギフテッドな児童の現状
ギフテッドの児童生徒にみられる状況
ギフテッドの子どもたちの現在の状況について見てみましょう。
下記の内容は、アンケートの結果に基づくものです。
学習に関する状況
ギフテッドの子どもたちは、特定の領域において優れた能力や強い関心、創造性や集中力、記憶力などが見られます。
しかし、これらの特性があるために、学校の授業の理解度が通常よりも早く、学習に関して困った状況になることもあるようです。
なかには授業がつまらないために登校するのを渋る例もありました。
また、ギフテッドの子どもの中には様々な障害による学習上、または生活上の困難を併せ持つ子どももいます。
読み書きなどの学習における困難がその例です。
こうした困難への対応も課題となっています。
学校生活に関する状況
ギフテッドの子どもたちは、言語の能力や思考力などが年齢に比べて著しく発達しています。
そのため、同級生との会話や友人関係の構築を難しく感じたり、友人関係だけではなく、教師に対しても授業の進め方や自分への関わり方をめぐって疑問を抱いたりすることもあります。
また、知的な側面の発達と異なって、精神的な側面では、年齢相応の発達だったり、発達の遅れが見られたりすることもあり、自分の感情を抑えることができず、集団の中でトラブルが起きたり、孤立したりします。
また、こだわりが強すぎるために学校生活の中で強いストレスを感じていたり、音に敏感なために通常の学校生活を送ることが困難な事例もあり、その結果、不登校になったり、学校に通わないという選択をする子どももいます。
これは、才能に応じた学習の機会を損なう事になるため、解消していかなければなりません。
教師・学校・教育委員会の状況
一方、ギフテッドの子どもたちが充実した学校生活を送っている例もあります。
それは
- 教師・学校・教育委員会による指導やかかわり方の工夫
- 認知や発達の特性に均する学習上の困難への支援
- 学校内の環境整備
- 学校外の学びの場
などの提供によるものです。
ただ、ギフテッドの子どもへの適切な支援を行っている教育員会・学校・教師はありますが、それぞれの教育委員会や学校の理解、体制によって左右されてしまいます。
まずはギフテッドの子どもの特性や支援に取り組むことの必要性、効果的な方法についての理解を進めることが必要です。
学校外における状況
ギフテッドの子どもたちは、学習内容で充実感が得られなかったり学校生活に困難を生じていることによって、不登校になることもあります。
そのような場合には、学校内だけでなく、学校の外に個人の特性や興味、関心に合った学習や生活の場が提供されることも重要です。
効果的な場としては
- 教育支援センター
- 博物館
- 大学の研究所
- 民間の学習の場
- コンクールやジュニア数学オリンピックなどの催し
があげられています。
しかし、地域によっては学習の場が近くにないなどの理由により、子どもや保護者がアクセスできていません。
また、学びの場があっても子どもや保護者に情報が届いていない、経済的負担が大きいなどの問題点があります。
環境整備を行うために、国民的な合意形成が重要
ギフテッドの子どもたちへの支援について、学校教育を含む教育行政には公費が使われています。
そのため、ギフテッドの子どもたちへの支援に関して、広く理解してもらうことが重要です。ギフテッドの子どもに対する社会的な理解を深め、一人ひとりの児童生徒の将来的な自立や社会参加を見据えたきめ細やかな支援を行うことが、ギフテッドの子どもたちの充実した学校生活や豊かな人生の実現に結びつくでしょう。
また、ギフテッドの子どもたちの社会参画を通じて、社会全体が豊かなものになっていくはずです。
ギフテッドの子どもたちへの今後の取り組み
ギフテッドの子どもたちへの学校や学校外の機関、地域社会での状況は、それぞれの地域や機関、また担当する人によって違っていました。
しかし、全ての子どもたちが多様性を認め合い、高め合える学校教育環境の中で、それぞれの資質・能力を伸ばしていけるようにするためには、地域や機関、人によって環境が変わったり、取り組みそのものが変わったりするということは避けなければなりません。
今後取り組む具体的な施策としては次の5つがあります。
①ギフテッドの子どもたちの理解のための周知・研修の促進
②多様な学習の場の充実等
③特性等を把握する際のサポート
④学校外の機関にアクセスできるようにするための情報集約・提供
⑤実証研究を通じた実践事例の蓄積
ギフテッドの子どもたちへ特性や支援方法などの理解を、学校だけではなく、地域社会や学校外の機関で進めることで、各機関の連携ができるようになります。
それはギフテッドの子どもに対してだけではなく、全ての子どもの能力を伸ばしていくために有益です。
なぜなら、学校、地域社会、学校外の機関が「子どもの特性を伸ばす」ことにおいて理解が進んでいれば、情報のやり取りや集約、提供もしやすくなり、サポートも増やすことができるためです。
そうなれば、学校の教師だけに負担がかかりがちな現状を打破し、子どもの資質や能力を伸ばすためのサポートが充実していくことでしょう。
基本的な考え方
目指すべき「令和の日本型学校教育」は「全ての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの実現」です。
個別最適な学びとは「指導の個別化」と「学習の個性化」の観点から考えられます。
「指導の個別化」
子ども一人ひとりの特性や学習進度、学習到達度等に応じて指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うこと。
「学習の個性化」
教師が一人ひとりに応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで、子ども自身が最適な学習になるように調整できること。
また、「5.実証研究を通じた実践事例の蓄積」のために、国と連携した教育委員会・学校などは、次のうち1つ、または2つ以上を選び、組み合わせて取り組むことになりました。
学校内での取り組み
- ギフテッドの子どもをはじめ、子どもの関心等に合った授業や学習活動
- ギフテッドの子どもを含む全ての子どもが互いに尊重される授業や学級経営
- 多様な学びの場の設定・連携、過ごしやすい居場所の整備、人的サポート
- ギフテッドの特性などを把握するためにサポートを受けながらのギフテッドの子どもへの指導・支援
- 才能と障害をあわせもつギフテッドの子どもへの対応
「子どもの関心等に合った授業や学習」とは、教師による授業だけではなく、一定数の授業時間を子どもが自ら立てた計画に沿って学習を進めたり、異なる学年の生徒が同じ場で学習したりする方法が考えられます。
また、ギフテッドの子どもたちだけではなく、全ての子どもがお互いの多様性を尊重し合い、活かせるような授業をする中で、自分の存在意義などにつながっていくでしょう。
学校内でも、普段過ごす教室だけではなく、他の教室や保健室、図書室など、各場所とそこにいる人たちが子どもにとって過ごしやすい場になり、それぞれの場の連携が取れていることが求められます。
ギフテッドの子どもたちの特性について、理解が進んでいない場合には、そのためのサポートを受けながら現場に当たるということも必要になってきます。
才能と障害を併せ持つギフテッドの子どもに対しての対応方法なども学んでいかなければなりません。
学校と学校外との連携
- 学習面、生活面にわたる学校と学校外の機関が連携し指導、支援していく
- ギフテッドの子どもに支援を提供するための学校外の機関のあり方、その機関と連携して行う学習状況の把握と評価
- 才能と障害をあわせもつギフテッドの子どもへの対応
学校だけではなく、大学や博物館などの学校外の機関との連携した指導や支援も有用です。
連携して行うためには、それぞれの子どもの学習状況を把握し、学校外での活動を評価できるようにすることも必要になるでしょう。
子どもを取り巻く環境の整備
- 教職員の研修、保護者・地域社会の理解を進める
- 情報集約や情報の連携・共有のあり方
- 子どもの情報共有、進学時の情報の引継ぎなどの連携の仕方
- 教職員や保護者に対するギフテッドの子どもへの対応に関する相談支援
ギフテッドの子どもたちの特性について、該当する保護者や教師だけではなく、他の保護者や地域社会の理解を深めることが、子どもたちに取って良い環境になる手助けとなります。
子どもが進学するときにも、それまでの蓄積された情報の引継ぎ、または共有していくことも連携する上での課題になるでしょう。
ギフテッドの子どもたちへ対応する教師や保護者に対する相談支援も忘れてはならないものです。
地域によって、ギフテッドの子どもたちが有益な情報にアクセスできないなどの課題は、デジタル技術の促進によっても少なくなっていくことでしょう。
全ての子どもたちが資質・能力を伸ばしていけるような教育を
審議のまとめとして、
多様な一人一人の児童生徒に応じ、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実による教育の在り方をいかに実現していくか、を考える一環として「ギフテッドの子どもたちへの支援策を考えていく」
ことが基本的なスタンスとなりました。
ギフテッドの子どもたちを含むすべての子どもたちが
- 自らの理解の程度や知的好奇心に応じ主体的に学習を調整できる
- 積極的に学習に取り組める
- お互いに特性や良さを認め合える
- 自らの存在感も実感できる
- 安心感、充実感を持てる
ようにと考えられています。
ギフテッドの子どもたちへの支援を通して、全ての子どもたちが資質や能力を伸ばしていけるような教育が実現されることを願います。
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