完全解説!小学校からプログラミング教育が始まった理由は発達にあった?
2020年から、小学校でプログラミング教育が必修化されました。
保護者の皆さまが小学生の頃には「プログラミング教育」はありませんでしたね。ご自身が経験していない内容になるので、「実際どんなことを行っているんだろう?」「我が子はそれについていけるのだろうか?」と、ご不安に感じているのではないでしょうか?
保護者の皆さまが、小学校で行われているプログラミング教育の目的や現実を知り、的確にお子さまへのフォローができるよう、その実情についてご紹介します。
なぜ?小学校にプログラミング教育が導入されたのか?
インターネットが普及し、スマートフォン所有の低年齢化が加速度的に進みました。新型コロナウィルスの蔓延も相まって、社会や人々の生活が大きく変化したことは記憶に新しいことでしょう。
今後は、将来の予測が難しい社会において、お子さんたちが情報や情報技術を主体的に活用していく力や、情報技術を手段として活用していく力を備えさせてあげることが重要となってきます。
また、これから先、子どもたちが将来どのような職業に就くとしても、「プログラミング的思考」を育んでおくことで、予測できない変化を前向きに受け止め、主体的に向き合うことで自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となるための力を育む必要があるのです。
このような背景から、小学校にプログラミング教育が導入されました。
ねらいは「プログラミング的思考の育成」
プログラミング教育と聞くと、「プログラマーとしての知識を得る教科」「プログラミング言語を学ぶ教科」と勘違いされがちですが、プログラミング教育のねらいは「プログラミング的思考の育成」です。
文部科学省が発表している小学校プログラミング教育の手引によると、
「プログラミング的思考」とは、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいい のか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」を指します。
とあります。
つまり、「ゴールに到達する過程を考え」「効率的にゴールに到達するためにはどうしたらよいかを考え」「試行錯誤しながら最適なルートを導き出す」思考のことです。
これは、「非認知能力」という、「学力テストなどでは数値化されない、子どもの将来や人生を豊かにする力」を指します。
非認知能力についてはこちらから!
非認知能力とは?伸ばすためのポイントと親ができる4つのこと
子どもの非認知能力を伸ばしたい!育み方やおすすめの習い事は?
小学校プログラミング教育で育む「3つの柱」
小学校のプログラミング教育で育む資質・能力は、以下の「3つの柱」で構成されています。
【知識及び技能】
身近な生活でコンピューターが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。
生活のあらゆる場面でコンピューターが活用されていることは、子どもたちもすでに知っていることですが、コンピューターがどのように活用されているか、どのような仕組みで動いているかなど、さらに掘り下げて学びます。
また、問題が起こったとき、それを解決するためには手順を踏む必要があることに気づいてもらいます。
【思考力、判断力、表現力等】
発達の段階に即して、「プログラミング的思考」 を育成すること。
非認知能力の根幹ともいえる、思考力、判断力、表現力の育成を指します。
問題を解決する上で、実現したい状態から遡って考えたり、効率の良い実施の順番を考えたりといった、試行錯誤できる力の育成です。
また、自身の考えを相手に伝えるためには表現力が必要であることを学び、実践してもらいます。
【学びに向かう力、人間性等】
発達の段階に即して、コンピューターの働きを、 よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度を涵養(かんよう)すること。
非認知能力が育成された先に身に付く力です。
子どもたちが社会人になったときに、自分の役割に責任を持ちながら、豊かな人生を歩める人材に育てることが目標とされています。
そのためには、教わったことだけを覚えるのではなく、必要に応じて自ら学ぶという学習姿勢を身に付けることが大切ですし、学び方にコンピューターの活用も必須となってきます。
そして、その学びの過程での人格形成こそが重要なのです。
なぜ、小学校でプログラミング教育が必要なのか
まだ生きていく上での必要な知識もないのに、すでに人格形成?と思われる方も多いかもしれません。
しかし、プログラミング教育は小学校だからこそ、導入する必要があるのです!
その理由についてを紹介します。
プログラミング教育の初め時
子どもが何かを学ぶ原動力は何だと思いますか?それは「好き」「楽しい」と思う気持ちです!既に「嫌い」になってしまったものを「好き」にさせることは非常に難しいのです。
保護者の皆さまも、自身の子どもの頃を思い浮かべてください。
運動が苦手な子どもが、その前日に逆さてるてる坊主を作って、明日の天候を呪っていませんでしたか?
英語嫌いな子どもに原因を聞くと、中学生になった最初の英語の授業で、その発音をクラスメートから笑われたことで、苦手意識を持ってしまったという話を耳にしたことはありませんか?
つまり、学ぶ対象に子どもがネガティブな印象を持たせないことが重要なのです。「できる」「できた!」と思える段階で導入し、楽しませることが大切となってきます。
苦手意識を持ってしまう前に取り入れるということは、早期教育が重要視される理由のひとつでもあるのです。
認知能力の成長とのバランスを検討!
とはいえ、何でも早くから始めればよいというわけではありません。また、始めたくても始められないという場合もあります。
特にプログラミング教育に関しては、「認知能力」がある程度育っていないと、現実(リアル)と仮想(バーチャル)の違いが理解できないため、乳幼児への導入は難しいでしょう。
皆さまは、スキャモンの発育曲線というものをご存じですか?
参考:【応用】スキャモンの発育曲線 SGS総合栄養学院
生きていくために最重要となる神経系(脳や脊髄、視覚器などの神経系や感覚器系)の成長が最も早く、6歳から8歳頃までの間に大人と変わらないレベルまで成長します。
画面の向こうにあるりんご(バーチャル)と、手の中にあるりんご(リアル)が、同じ「りんご」という果物ではあるけれど、別の物体だと認知できるようにならなければ、プログラミング言語を使った教育はできません。
一方で、一般系(身長や体重、筋肉、骨格)などの成長も、生まれてから3歳頃までには著しい伸びを見せますが、マウスやキーボードを操作できる程度に手先の器用さが育ってからでないと、自分の手を思うように動かせないことが原因で、「自分にはできない!」という劣等感を植え付けかねません。
プログラミング教育の導入には、このバランスが取れるようになり、かつ「好き」「楽しい」と思える成長の状態で導入することが大切です。
認知と非認知のバランスがよいのが「小学生」
プログラミング教育を導入するための条件として、前述のとおり認知能力と身体能力のバランスが取れている必要があるといわれています。
このバランスが最もよく、苦手意識を持つ前ということで、子どもたちにプログラミング教育を導入するのに最も適しているのが、「小学生」なのです!
リアルとバーチャルの違いを認知できるようになっており、手先がある程度使えるようにもなっています。
しかも学業成績などが原因となりやすい深刻な劣等感を抱いていない時期でもあるでしょう。
「僕ならできる!」「私もできたよ!」と達成感を体で感じてもらうことで、積極的な学びに繋がりやすいのが「小学生」なのです。
潜入!小学校のプログラミング授業
小学校におけるプログラミングの授業には、コンピューターを用いずに行う授業とコンピューター上でプログラミング言語を用いて行う授業とのふたつがあります。
コンピューターを用いずに行う授業は、 あくまでも「プログラミング的思考」を育成することが目的なので、コンピューターを用いることが必須ではないのです。
実際には、どのようなことが行われているのでしょうか?
さまざまな学習場面がプログラミング教育に!
小学校でのプログラミング教育は以下のように分類されます。
参考:小学校プログラミング教育の手引(第三版)
いかがでしょう?学校という「場所」で過ごす全ての活動において、プログラミング教育の導入が可能です。
とはいえ、密接に授業と関わっているのがAとBになりますので、その一例を紹介します。
「私たちの生活を豊かにする未来の宅配便」をテーマに取り上げた指導案があります。
まず、宅急便の仕組みを知り、物流量が増えたことやそれによる人手不足などの問題を洗い出し、その問題をどのような形で解決していくかを考えるという流れになっています。
この学習過程では、小学校プログラミング教育で育む「3つの柱」がふんだんに盛り込まれています。
バーコードが使われることで荷物の仕分け、位置情報サービスを使用していることなどは「知識及び技能」に相当しますし、人材不足の問題をどのように解消すればよいかを検討することは「思考力、判断力、表現力等」に相当します。
この学習を行う上で、宅配業者の苦労に思いを寄せ、遠方からの荷物が正確に自分の元へと送られることへの感謝の気持ちが芽生えるでしょう。
最終的には「学びに向かう力、人間性等」に結び付けられることを狙いとしています。
小学校の授業は「Scratch(スクラッチ)」でこう変わる!
それでは次に、コンピューター上でプログラミング言語を使うことが、どのように教科に関わるのかをご紹介します。
学校で行うプログラミング教育の授業内容を公開します!〜Scratch(スクラッチ)でこんなことができる〜
ここでは算数を例にご紹介します。
例えば、正方形をプログラミング言語を使って画面上に表示させます。
正方形とは「4つの辺の長さが全て等しく、4つの角の角度が全て等しい(90度)四角形」のことを指します。
まず、キャラクターを90度回転させ、100歩動かします。再度90度向きを変えてまた100歩動かす。この動作を4回繰り返せば正方形を描くことができるということが分かります。
これを実現するには、「4つの辺の長さが全て等しく、4つの角の角度が全て等しい(90度)四角形」という図形を表現するためにはどうしたらよいか?を手順立てて考える必要があり、これが「論理的思考力」になるのです。
また、それを表現するためにはどうしたらよいかを考える必要もあるので表現力の育成に繋がり、全て「非認知能力」に繋がっていきます。
これを小学生でも見てわかるようにするために、プログラミング言語を使用して行うのです。
現在、国内のほとんどの小学校では、8歳から16歳を対象に開発された「Scratch(スクラッチ)」というビジュアルプログラミング言語が採用されています。
ビジュアルプログラミング言語とは、上の図のように、ブロックのようなパーツを組み合わせることで、視覚的にどのような流れになっているかが非常に分かりやすくなっているプログラミング言語のことです。
よく映画やドラマのシーンで見かける、黒い画面に英数字が大量に表示されているものではありません。
小学生でも見た目が非常に分かりやすいプログラミング言語です。
小学校プログラミング教育ってどう評価される?
保護者の皆さまは、「プログラミングの成績はどう付けられるのかしら?」とご心配になる方もいらっしゃることでしょう。
プログラミングは「教科」ではありませんので、プログラミング単体での評価はありません。あくまでも、プログラミングを学習活動として実施した教科等において、それぞれの教科等の評価規準により評価するのが基本となります。
つまり、各学校で設定した、プログラミングを取り入れて学習を行った教科に、「プログラミング的思考」の評価が反映されるという仕組みです。
プログラミング言語が扱えないから評価が低くなるということはありません。
ご家庭でできるプログラミング教育のフォロー
小学校で実施されているプログラミング教育についてご紹介してきました。
保護者の皆さまは、お子さまの非認知能力がどう評価されるのか、プログラミング言語を扱う部分が苦手になってしまい、学習を楽しめなくなるのでは?と思われた方も多いことでしょう。
算数や国語といった教科のフォローは既に行っているのではないでしょうか。
計算や漢字が苦手ならドリルなどで演習量を増やしてあげたり、学習塾に通わせている場合もあるでしょう。
私たち人間は、既に自分が知っている内容のものであれば対処できるのですが、未知の領域のことに関しては不安が先立ち、対処も遅れがちになってしまいます。
こちらの動画にもある通り、ご家庭でもお子さまをフォローできることがあります。
①キーボードやマウスに慣れさせ、簡単に操作できるようにさせる
学校ではパソコンを使う場合がほとんどです。そのため、学校ではキーボードやマウスを使うことになりますし、将来的にも必要なスキルでしょう。
タッチタイピングの練習ができるサイトが数多くあります。お子さま向けにゲーム性を持たせたサイトもありますので、そういったところを活用してタイピングスキルを身に付けさせておくと良いですね。
いずれ学校で学ぶローマ字も、ここで覚えてしまえれば一石二鳥です!
②ビジュアルプログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」に触れさせる
ビジュアルプログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」は、無料で使用することができます。サイトにユーザー登録をして、チュートリアルを見ながら少しでも触れさせてあげてください。
学校でプログラミング言語を扱う場合、ほとんどがScratch(スクラッチ)です。
既にみたことがある!使ったことがある!という状態にしてあげることで、授業で使うときに、嫌悪感を抱かせることがなくなります。
③保護者の皆さまこそがプログラミングに興味をもつ
何より大切なのは、保護者の皆さまこそがプログラミングに興味を持たれることです。
お子さんと一緒に、Scratch(スクラッチ)で遊んでみましょう!
親子で同じことに取り組むことで、お子さんには安心感を与えることができます。、保護者の皆さまもお子さまが何に取り組んでいるかを知ることで、親子の信頼度が上がるだけでなく、お子さんをほめるチャンスも増え、非認知能力の向上に繋がります。
以上を踏まえて、お子さんがプログラミング教育に積極的に向き合えるように準備をしてあげてください。
プログラミング的思考を身に付けるために…
小学校でプログラミング教育が必修化されましたが、プログラミング的思考を身に付けるためには、「小学生でも見てわかるために」「道具を使い」「楽しく」行うことが大事だと言われています。
教科としての成績こそつきませんが、「総合的な力」を問われるようになったと言えますね。
保護者の皆さまにプログラミング教育へのご不安があったり、お子さまがプログラミングそのものに興味を示すようであれば、プログラミング教室に通ってみても良いかもしれません。
みらいいでは、ゲームプログラミング体験ワークショップを開催中です。
実際に「Scratch(スクラッチ)」を使いながら、コーチングスキルをもったコーチ陣がお子さまのやる気を引き出します。
まだ体験していない方は、ぜひご参加ください。我が子の違う一面を垣間見れるでしょう
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