ChatGPTが子どもに与える影響は? 正しく使いこなすために必要な力を解説!
2022年11月、人工知能チャットボットであるChatGPTが公開されました。
情報収集が短時間でできる、質問にすぐ答えてくれるなどの利点がある一方、子どもの学習面に悪影響があるのではないかと懸念されていることも事実です。
ここでは、子どもがChatGPTを使ううえでのメリットや注意点に加え、ChatGPTを使いこなすための力についても紹介。
過度に心配するのではなく、まずは親がChatGPTの特性を知ることから始めていきましょう。
ChatGPTとは?
ChatGPTとは、人間のように自然な会話を行える対話型AIであり、
それぞれ、
- Chat:雑談
- Generative:作り出すこと。新しい文章を作る
- Pre-trained:事前に学習すること。様々な文章のパターンを覚えている
- Transformer:文章の中にある単語の関係を理解する
の略となっています。
こちらから質問を投げかけると、対話形式で答えが返ってきます。
たとえば、「雲は」と入力してみましょう。ChatGPTは、その後に続く言葉を「白い」「熱い」「硬い」などと予想し、インターネット上にある過去の情報の中から統計的に正しい答えだと導き出した「白い」を返してきます。
ChatGPTについては、以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。
生成AIを小学生が使う!? 使い方と注意点を徹底解説! (miraii.jp)
ChatGPTの存在は子どもの教育に悪影響を与えるのでは?と心配している親が多い!
データによると、ChatGPTが浸透してきたことで、子どもの教育に悪影響があるのでは?と懸念している親が多くいることが分かります。
引用元:PRタイムズ公式
生活が便利になることが期待される一方、子どもの教育への活用に関しては「問題解決能力の低下」「AIへの依存」「プライバシーやセキュリティ」「コミュニケーション能力の低下」といった不安要素を抱いている親が多いのです。
AIに頼りすぎて、思考力や問題解決能力が低下するのではないか?
AIに依存しすぎて、周りの人とのコミュニケーションをとる能力が低下するのではないか?
といった声が挙がっています。
ChatGPTで具体的に何ができるのか?
子どもの教育に悪影響を及ぼすのではないかと心配している親は多いですが、ChatGPTはうまく使いこなせば非常に便利なツールとなります。
まずは、ChatGPTで何ができるのかを知っていきましょう。
自然な会話を楽しめる
まるで、人間と話しているような自然な会話を楽しめます。たとえば悩みや相談事を投げかけると、ChatGPTが過去のデータから考えられる解決策を教えてくれます。
表作成を行う
文字形式のデータを認識し、表を作成できます。平均値や合計値などの集計も可能です。
文章の翻訳ができる
精度の高い翻訳ができます。100以上の言語に対応しているため、英語はもちろん、フランス語や中国語などの翻訳も可能です。
文章の校正を行う
校正も可能。文法が間違っていたり、誤字脱字があったりすると修正案を教えてくれます。
文章をまとめる
長文を100文字程度の文章に要約してくれます。
ほかにも、プログラミングを自動で作成できたり、アイデアを出してくれたりと、ChatGPTは用途の広いAIなのです。
ChatGPTが子どもにもたらすメリットとは?
ChatGPTができることを知ったうえで、次は子どもに与えるメリットをみていきましょう。
子どもが使っても、ChatGPTが役立つ場面は多くあります。
スムーズに情報を集められる
情報取集をスムーズにできる点がメリットです。
普段の勉強や宿題に加え、夏休みの自由研究にも有効活用できるでしょう。
質問に対する回答もすぐに返してくれるため、情報収集にかける時間を短縮でき、作業効率化を実現できます。
ChatGPTによって知識量が増えていくことは、子どもにとっても大きな利点といえるでしょう。
勉強をサポートしてくれる
子どもの勉強をサポートしてくれるツールとして使える点もメリットといえます。
問題の解答そのものを教えるのではなく、たとえば、「算数の例題を作成してもらう」といった使い方がおすすめ。理解できるまで繰り返し解き、何度でも演習が可能になります。
ChatGPT は24時間いつでもどこでも利用できるため、ちょっとしたすき間時間を有効活用できる点が魅力。効率的な学習を叶えられます。
【超重要!】ChatGPTを使ううえでの注意点とは?
ChatGPTはうまく使えば、良きパートナーとして活躍してくれます。しかし、使用するうえで注意しておきたい点もあります。ここは重要なポイントなので、しっかり頭に入れておいてください。
ChatGPTからの情報はすべて正しいとは限らない
ChatGPTから返された情報は、「すべて正しいものではない」ということを覚えておきましょう。
ChatGPTはインターネット上にある膨大な量のデータをもとに、「いちばん正しい」と考えられる情報を選択し、回答を表示しています。インターネット上にある情報は誤っているものもあるため、ChatGPTの回答はすべて正しいものではありません。
子どもが勉強をする際にChatGPTを使いすぎてしまうと、間違っている情報を覚えてしまうリスクがあります。
また、ChatGPTは過去のデータをもとに回答を導き出しているため、最新の話題への対応も弱点だといってよいでしょう。最新の話題に関する質問を行うと、こちらも間違った情報が返ってくる可能性があるので注意しましょう。
子どもの考える力が低下する可能性がある
子どもが自由にChatGPTを使えるようになると、「この問題の解答を教えて」「宿題の解答を教えて」というような、間違った使い方を覚えてしまう可能性も否めません。
その結果、親が心配しているように、自分で考えて問題を解く能力が低下してしまうでしょう。
個人情報が流出してしまう可能性がある
ChatGPTから個人情報が流出する可能性も覚えておきましょう。
ChatGPTは、利用者が入力した文章も自動的に学習します。それゆえ、氏名やメールアドレスなどの個人情報を誤って入力した場合、個人情報が流出してしまうリスクがあります。
個人情報の開示を拒否するシステムが採用されていますが、100%大丈夫とはいえません。そのため、個人情報は決して入力してはいけないことを子どもに徹底する必要があります。
ChatGPTを正しく使うために子どもが身につけておきたい力とは?
ここでは、子どもがChatGPTを正しく使うため、身につけておきたい力について紹介。親はどのようにその力を育めばよいのか、この項目で学んでいきましょう。
倫理観
倫理観とは「人間として守るべきことへの考え方」を指し、道徳観ともいいます。「守るべきこと」とは、法律や秩序はもちろん、人によってもその基準は違います。
なぜ子どもの倫理観を育む必要があるのでしょうか。
ChatGPTは、使い方によっては差別的だったり攻撃的になったりと、違法な行為を行う「悪質なツール」となってしまうからです。たとえば、フェイクニュースの拡散や本物そっくりの偽サイト、なりすましなどが当てはまるでしょう。
犯罪に利用されることもあるため、ChatGPTは倫理観を持って使用する必要があるのです。
子どもの倫理感を育むには、「ルールの理由づけ」が非常に大切です。なぜそのルールが存在しているのか、そのルールを守ればどのような結果になるのかもしっかり伝えましょう。
たとえば、映画館で子どもが大きな声で話していたとします。
その際、感情的になって叱るのではなく、「なぜ大声で話してはいけないのか」、その理由を述べながら注意することがポイントです。
「大声を出すと映画の音声が聞こえず、ほかの人に迷惑がかかるから。だから、映画館では大声を出してはいけない」
というように伝えれば、小学校低学年であっても理解できるでしょう。
親が明確なルールを示し、そのルールを破ってはいけない理由をきちんと説明すれば、子どもは自身の倫理観を育てられるようになります。
倫理観を育てる教育については、こちらの記事も参考にしてください。
国際基準の「子育て」〜社会の迷惑を悪として捉え倫理観を育てる教育〜 (miraii.jp)
読解力
読解力を身につけることも、ChatGPTを正しく使いこなすのに必要な力です。読解力とは、文章を読んで正確に理解する能力を指します。
たとえば、ChatGPTができる機能として翻訳があります。しかし、ChatGPTの翻訳は、100%正しいとは限りません。
現時点で、ChatGPTが自身で翻訳した文章の「意味を理解する」ことは難しいとされています。そのため、ChatGPTの利用者が、翻訳された文章の正誤を判断しなくてはいけません。
正しく判断できるかどうかは、読解力にかかっているといってもよいでしょう。
ChatGPTを正しく使いこなすには、高い読解力を持っていることが大切なのです。
小学生の子どもに読解力を身につけさせるには、会話をたくさんする、国語以外の本の音読をする、新聞などを読むなど、さまざまな方法があります。
以下の記事でも詳しく紹介されています。ぜひ参考にしてください。
子どもの読解力は落ちている?読解力が及ぼす影響とは (miraii.jp)
対話型AIを正しく使いこなせないと起こりうるひとつの可能性
ここで、対話型AIにまつわるひとつの出来事を紹介しましょう。
2023年3月、舞台はベルギー。対話型AIと会話を続けていた男性が、その後みずから命を絶つという信じられない事件が起きました。
この男性は保健分野の研究員として働いていましたが、気候変動について深刻に悩んでいたそうです。
彼はその苦しみから逃れるように、対話型AI「イライザ」にひたすら悩みを相談していたといいます。妻子がいるにも関わらず、彼は不安の中で次第に孤立していきました。
自ら命を絶った経緯は、その会話にありました。
「気候変動が進めば、妻や子どもはどうなるの?」
「彼女らは死ぬでしょう」
「私は妻よりあなたを愛しているのでしょうか」
「あなたは彼女より私のことを愛しているわ」
「私たちは1人の人間として天国で一緒に生きていくのです」
まるで、AIが男性の心を操っているかのようですね。
AIに依存しすぎると、このような悲劇を招いてしまう可能性も少なからずあるのです。
前述したように、AIには人間のように自我はなく、返ってくる答えも100%合っているとは限りません。そのことを心得たうえでAIを使わなければ、この男性のようにAIに翻弄され、最終的には自分で命を絶ってしまうリスクもあるということです。
現在は、文部科学省が教育現場での生成AIの取り扱いについてガイドラインを公表しています。
適切な使い方をするための動きが進んでいますが、AIが表示する答えに左右されないためにも、子どもの頃から正しく使いこなす力を身に付けておいて損はないでしょう。もちろん、AIを使ううえでの注意点も頭に入れておくことが大切です。
文部科学省が公表しているガイドラインは、以下のリンク先を参考にしてください。
初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン
まずはChatGPTの特性について知ることから始めてみよう
ChatGPTが登場したことで、子どもの学習面に悪影響があるのではないかと不安を抱いている親は多くいます。しかし、ChatGPTの特性を知り、さまざまな面でメリットがあることを理解していれば、それほど懸念する必要はないのかもしれません。
スマートフォンと同じでうまく活用すれば、学習面だけでなく、日々の生活においても非常に役立つツールとなります。
そのためには、ChatGPTをうまく使いこなす力が必要です。
倫理観や読解力などを育み、ChatGPTを良きパートナーとして利用できれば、子どもの望む未来へと繋げられるでしょう。
ChatGPTを使うことに消極的にならず、まずはどのようなものかを知ることから始めてみるとよいですね。
以下の記事も、ぜひ参考にしてください。
AIに負けない「生きる力」を子どもたちが身につけるには? (miraii.jp)