コンタクトレンズの空ケースをリサイクル!シードのSDGsとは!
海洋プラスチックをご存じでしょうか?
手軽で強度があり、簡単に作れるプラスチックは、製品だけではなく、ビニールなどの包装、緩衝材、ケースなど様々なところで使われています。
しかし、そのほとんどが使い捨てプラスチックとして廃棄され、最後には海に流れ着き、海洋プラスチックになるのです。海洋プラスチックは、魚や、鳥、アザラシ、ウミガメなど、海洋生物に甚大な被害をもたらしており、大きな社会問題となっています。
今回は、プラスチックが使われているコンタクトレンズの空ケースリサイクルに取り組まれている株式会社シードの及川さんにお話を伺いました。
及川 智仁佳(おいかわ ちにか)
2014年株式会社シードに新卒入社後、大阪・和歌山でコンタクトレンズの営業に携わる。2019年よりコーポレートコミュニケーション部 広報・SDGs推進室所属。CSR活動や統合報告書の作成等、非財務領域での取り組みを推進。
シードってどんな会社?
株式会社シードは、国内大手のコンタクトレンズの会社です。
1951年に日本で初めてコンタクトレンズの研究を開始し、今年で創立66周年を迎えられました。
埼玉県の鴻巣市に工場があり、月間5300万枚のコンタクトレンズ製造能力があります。
コンタクトレンズの種類は37種類あり、度数は+10~‐24まであるとのこと。
「目が見えにくい人の視力を矯正することでサポートしたい、社会課題の解決に努めたいとの想いから、-24.00はニッチですが2weekタイプでご用意しています」と及川さん。
また、工場では当初から環境に配慮されていたそうです。
及川さん‐「私たちは製造メーカーとして、大きな工場を埼玉県の鴻巣市に持っています。工場を持つことは環境問題を取り巻く諸リスクがあります。それらに対し、地域住民の方の理解を進めることと、地域に根差した企業であり続けたいという想いから、環境に配慮した工場を当初から目指しているのです。
SDGsの言葉が広まる前からCSRの一環として環境問題に危機感を持ち、企業が作る責任として何ができるかを考え、環境に適した工場を運営しています」
引用元:TEST
みらいい編集部‐「そのような思いから、今回ご紹介するBLUE SEED PROJECTに繋がったのですね!」
BLUE SEED PROJECTとは?
BLUE SEED PROJECTはコンタクトレンズの空ケースリサイクル。
及川さん‐「2019年6月から始まった、ユーザー参加型のリサイクルプロジェクトです。
コンタクトレンズのメーカーを問わず、コンタクトレンズの空ケース(ブリスター)を回収して再資源化しています。
サーキュラーエコノミーの実現を行いたいと当初から活動し、プラスチックである空ケースを、何度も生まれ変わることができる物流パレットに再資源化することになりました。
空ケース自体は純度の高いバージン素材で作られているため、強度があって何にでも生まれ変わることはできますが、今のところ、循環してリサイクルできるのが物流パレットだと考えています。
物流パレットを有価物として販売した収益は、1年に1回海の環境保全団体JEANさんに全額寄付しています。これが一連の流れです」
海洋プラスチックに関してはこちらの記事をご覧ください。
【SDGs14.海の豊かさを守るために…】海洋プラスチックについて考えてみよう!
親子で考えよう!目標14海を守る
コンタクトレンズの空ケースが物流パレットに
コンタクトレンズの空ケースの回収は全国で行われています。
及川さん‐「全国に914か所回収拠点があります。コンタクトレンズの空ケースの回収を広めるにあたって、弊社の営業社員への理解がまず必要でした。それぞれの営業社員が眼科などに訪問してこの活動を説明し賛同企業を増やしていくからです。ただ、リサイクルするもののイメージが湧かないというのがありました。物流パレットは一般の方にはなじみが薄いものです。しかし、需要があるということで、物流パレットを選定しました。
現在、物流パレットは木材でできたものからプラスチック製に切り替わっています。
その理由が、木材のささくれや破損です。木材だと危なくてよく労災の原因になると聞いています」
みらいい編集部‐「「物流パレット」に着目されたのにも驚きです。プラスチックなら破損したとしても、溶かしてしまえば何度でも再利用できますね!」
リサイクル品は、リサイクルした先で不要になれば廃棄されるという点が問題にもなっていました。
しかし、物流パレットへのリサイクルは、何度でも再製できる無駄の生まれない循環エネルギー「サーキュラーエコノミー」を実現されているのですね。
サーキュラーエコノミー:「循環経済」とも。製品、素材、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限化する経済システムのこと。対して、これまでの一方通行でモノを使う経済を「直線経済」と呼びます
プラスチックをリサイクルできる「ドックス」
株式会社シード様は、コンタクトレンズ製造工程で産業廃棄物として出るポリプロピレン製のプラスチックにも注目しました。しかし、ポリプロピレンは少量でも異物が混ざると売却が難しい資源。
そこで、「ドックス」というリサイクルシステムを株式会社ダイトク様と一緒に開発されました。
及川さん‐「ドックスは工場としての取り組みです。
工場内で出たプラスチックはほぼ100%リサイクルしていましたが、混合物と呼ばれるアルミやコンタクトレンズ片がついたものは産業廃棄物にせざるを得ませんでした。年間700~800トンもの量です。それではもったいないということで、リサイクル業者のダイトクさんと共同で分別リサイクルできる工程を開発しました。仕組みそのものはダイトクさんのものです」
及川さん‐「コンタクトレンズのケースには、蓋の部分にアルミ、プラスチック、コンタクトレンズの部分があります。
コンタクトレンズはサーマルのリサイクルにして、アルミとプラスチックはマテリアルリサイクルへ。アルミは自動車などに使われたりしています。
工場から出る物はPP、アルミ、コンタクトレンズ片です。遠心分離機を使って重さで分けるなどのシステムは弊社に適していたといえます」
工場からの廃棄物だけではなく、一般のユーザーを巻き込んだBLUE SEED PROJECTは、2022年3月に環境保全活動で優れた取り組みを行う企業や団体に送られる「彩の国埼玉環境大賞」を事業者部門で受賞されています。
コンタクトレンズの空ケースで万華鏡作り!
https://youtu.be/PIx2eO-e1Yc
コンタクトレンズの空ケースを使った実験教室もされています。
及川さん‐「コンタクトレンズは目が悪い人にとっては生活の必需品です。年々、出荷も増加しています。でもそれをリサイクルできることは知られていません。もっと知っていただきたいと、コンタクトレンズの箱やアルミを使ってYouTubeのチャンネルで工作をしたり、万華鏡を作る授業をしたりしています。
子どもから親御さんへ「空ケースはリサイクルできるんだって。知ってた?」と親子の会話になったり、大きくなって正しくコンタクトレンズを使うための啓発の良い機会となればいいなと思っています」
及川さん‐「今まで保育園や学童で理科実験教室を対面でやっていましたが、コロナ禍のため難しくなりました。そこで、「こども科学プロジェクト」として3年前にYouTubeで立ち上げました。お家でできたり、見ていて楽しいものが主となっています。
化学のメーカーなので、「光る」「ゲル」などをキーワードにしていましたが、最近はエコと絡めてリサイクルとしての実験教室をするようになりました。コンタクトレンズの空ケースで作るランプシェードなどですね。こちらをベースに対面でも出前授業をしています」
高校で出前授業をされたときに、嬉しい感想を頂いたそうです。
及川さん‐「高校の生徒たちと先生から、「今までSDGsという言葉ばかりが先行していて、実際に自分たちが何をしたらいいか分からなかった。でも、このプロジェクトを通して環境問題を考えるきっかけになったり、自分たちがSDGsに参加できたりした」という声をいただきました!」
みらいい編集部‐「SDGsを「自分事」としてとらえてくれたのは嬉しいことですね」
これからの出前授業が楽しみです。
小学校での出前授業でSDGsの活動を広めたい
「これからも出前授業は増やして行きます」と及川さん。
すでにいくつかの小学校で出前授業が予定されています。
及川さん‐「小学生が対象だと、工作を通して学んでもらう事が主になります。
他に、工場見学も行っています。夏休みに工場まで来てもらって、太陽光パネルがある広い敷地や、企業がどんな取り組みをしているかを親子で見てもらうのもいいなと考えています。
いろんな企業が工場を持ち、SDGsに取り組んでいるので、親子で参加するのもSDGsについて考えるのによいきっかけになると思います」
※工場見学は高校生以下が対象です。
みらいい編集部‐「情報をインプットするだけだと結局何もやらないことになりがちです。
万華鏡を作ったり工場見学に行ったりなど、体験を親子で共有できるのはとてもいいですね!」
社内ではコンタクトレンズの空ケース回収コンテストも!
社内でもSDGsの活動をされているそうです。
及川さん‐「弊社の社員はもちろんこの活動に積極的に参加しており、大量のコンタクトレンズの空ケースを集めてくれています。誰が空ケースを多く集めたかを競う社内コンテストもあるんですよ。
自分の分だけでは限界があるので家族や友達にもお願いして集めるのですが、同時にコンタクトレンズの空ケースはリサイクルできるのだと広めることにも繋がっています。
リサイクル活動は、空ケースだけでなく他にもペットボトルのふたの回収などもしていますよ」
社員の一人ひとりがSDGsへの高い意識を持って取り組まれているのがうかがえますね。
出前授業を通して小中高生に回収活動を広めていきたい
最後に今後の活動についても聞きました。
及川さん‐「回収拠点は様々な施設、学校、企業で設置していただいていますが、まだ広く周知がされていない事が課題です。コンタクトレンズの空ケースの回収率は年々増えてはいますが、出荷の方が上回っている状態です。
今年度の目標は「コンタクトレンズの空ケースを集めてくれる人たちへの働きかけ」です。
回収量も1.5倍のKPIを掲げています。
出前事業や回収活動など、対面の活動を強化し、特に小中高生に訴えるものをと思っています」
これからますます子どもたちへの働きかけが増え、SDGsの意識も高まっていきそうですね。
KPI:Key Performance Indicator。「重要業績評価指標」
目標を達成するプロセスでの達成度合いを計測したり、監視したりするための、定量的な指標のこと
コンタクトの空ケースの回収に協力してSDGsの活動に参加してみよう!!
コンタクトレンズの空ケースの回収は全国で行われています。
及川さん‐「空ケースを回収する拠点はHPで掲載しています。眼科や販売店の住所などです。
どんなメーカーのものでも回収していますが、2つだけ注意点があります。
1つは必ずコンタクトレンズのケースに付いているアルミを外すこと。もう一つはゴミが入らないようにすること。
液体は蒸発するので、汚れていなければ洗わずにそのまま持ってきていただいて問題ありません」
コンタクトレンズを買いに行くタイミングで持ってきていただくユーザーの方が多いんだとか。
家族にコンタクトレンズを使用している人がいるなら、子どもたちも気軽にSDGsの活動に参加できますね。家族で一緒に取り組んでみてはいかがでしょうか?
空コンタクトレンズ回収拠点はこちらからご確認ください
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