小学生の読書感想文はどう取り組む?子どもが成長する親のサポートとは
小学校の夏休みの宿題で手こずるものの一つに読書感想文があります。本を読むのが好きでも、いざ読書感想文を書こうとすると何を書けばよいのか分からなくなる場合も少なくありません。
しかし、読書感想文を書く狙いである「著者や登場人物の多様な考えに触れること」「自分の気持ちと向き合い、考えを深めること」を理解すると、親のサポートで子どもの考える力や成長を伸ばしてあげることができます。そこで、今回は読書感想文の書き方について解説します。
読書感想文を書くプロセス
読書感想文を書くには、ただ本を読むのと違って、プロセスを踏む必要があります。
それは下記のものです。
- 本を選ぶ
- 心が動いたところに付箋を貼りながら本を読む
- 構成をより具体的にして文章を考える
- 原稿用紙に下書きをする
- 推敲(すいこう)して清書する
順に見ていきましょう。
1.本を選ぶ
本を選ぶ際には、子どもが読みたいものを選ぶようにします。子どもが興味を持てないのであれば、課題図書(注1)は無理に選ばなくてもよいでしょう。
図書館や書店でいくつか興味のあるものを選ばせ、その中から読書感想文に書けそうなもの、つまり、心が動いたり考えることが多そうな本を選びます。
夏休み前から、本を読むときに読書感想文によさそうな本をピックアップしておくのもよいですね。読書感想文を書くときに初めて読む本である必要はなく、前に一度読んだ本でもかまいません。そのほうが、子どもも内容を理解しているので書きやすい場合もあります。
(注1)課題図書:「青少年読書感想文全国コンクール」に応募する時に読む、このコンクールの主催者が指定する図書のこと
2.心が動いたところに付箋を貼りながら本を読む
「心が動いた」と感じたところに付箋を貼りながら読み進めましょう。心が動いたとは、驚いた、楽しい、かわいそう、いやだ、どうしてそんなことをするんだろう?など、何か心に思うことです。
また、「著者が何を伝えたいのか」を考えながら読みます。その本の「テーマ」とも言えるかもしれません。子どもには少し難しいかもしれませんが、ここを意識して読むことで、読書が著者との対話に発展し、考えを深められるのです。
親はそのために、同じ本を読み、読み終わった後の対話で「誰が」「なぜ」の質問を活用しましょう。例えば、「どこがおもしろかった?」「それはなぜ?」「主人公がその行動をしたのはどうしてかな?」「著者はなぜここで主人公にこの行動をさせたんだろう」などです。
子どもの考えを深めるために会話をしていると、主語があいまいになることがあるので注意が必要です。
3.構成を考える
付箋を貼りながら本を読み終えたら、次は構成です。
構成は
- はじめ
- なか1
- なか2
- おわり
に分けて考えます。
初めて読書感想文を書く場合は、親が子どものサポートをしてあげましょう。子どもが具体的に考えられるように、質問をしていくのです。質問の答えを箇条書きで構いませんので、メモをしていきます。このメモが読書感想文に仕上げるときに参考資料となります。
はじめ
その本を選んだきっかけを書くところです。
なぜ読もうと思ったのか、誰かに勧められたのか、あらすじを読んで興味をひかれたからなのか、もしそうであるならどこに興味を持ったのか。本との出会いは人それぞれなので、ここで個性を出せますね。
親は、「どうして読もうと思ったのかな?」「どんなところがおもしろそうだと思った?」「それはなぜ?」と質問をしながら、メモにまとめましょう。
なか1
「なか1」には読書体験を書いていきます。
簡単なあらすじと心に残ったこと(その1)をまとめます。あらすじは簡単なもので構いません。もし、長すぎるようなら、「つまり、それはどういうことかな?」などと、質問をしながら短くまとめていきましょう。
心に残ったこと(その1)については、付箋を活用します。本に貼った付箋の中から、最も心が動いた部分を抜き出します。自分はどう感じたのか、なぜそう思ったのか、ほかの登場人物の気持ちはどうか、自分ならどうするか、などを親子の会話を通して引き出してあげましょう。それをメモに残していきます。
なか2
「なか1」よりもさらに心に残ったこと(その2)について書きます。
付箋を参考に親子の会話から内容を深めていきましょう。関連する日常生活で起こったことなども絡めていくと、文章の肉付けがうまくいきます。
おわり
「なか1」と「なか2」に共通する感想や考えなどを書きます。ここで生きてくるのが「著者は何を伝えたかったのか」を意識しながら読んだことです。著者の伝えたかったことを受け取り、読んだ前と比べて自分の思いや考え方がどう変わったかを書きます。
読んだあとの変化や実際にしたこと、起こったこと、本を読んで知ったことを今後どう活かしていくか、などでもよいですね。
4.原稿用紙に下書きをする
3.で書いたメモをもとに、文章の順番を考え、足りなければ文章に肉付けをしていきます。「うれしかった」「おもしろかった」「悲しかった」などの表現は、具体的に表現するようにしましょう。
たとえば、「悲しかった」は「心が砕かれるように悲しかった」、「うれしかった」は「涙が出るほどうれしかった」などに言い換えられます。
また、本の内容を主にして書くのではなく、本の内容から考えを深め、自分を中心に書きましょう。本に書いてあることに関連する自分の身近な例を取り上げ、それについての自分の考えや意見を書きます。
そのためには、自分が考えるためのテーマを本の中から探し、そのテーマと関係のある身近なテーマや出来事は何かを見つける必要があります。
ぜひ親子の対話を通じて探しましょう。親は、本の具体的な場面を抽象化し、子どもに聞いてみる方法もあります。たとえば、本の場面が「友だちと行き違いでケンカをしてしまい、気まずくなってしまった」なら、「気持ちが行き違ってしまったなと思うことはあるかな?」と聞くとよいですね。
下書きは原稿用紙に書くのがポイントです。原稿用紙の書き方の決まりを確認しながら書く事で、清書をするときに「1マス開け忘れた」「カギカッコの位置が違っていた」などの間違いを減らすことができるからです。
最後まで書いてから途中に間違いをみつけると、多くを消すことになってしまい、子どもがやる気を失ってしまうかもしれません。ですので、下書きの段階で原稿用紙の書き方の決まりを確認しながら書き進めましょう。
5.推敲して清書する
下書きを書き上げたら一晩おいてから見直します。音読すると、文章が読みにくいところ、句読点の不自然なところに気づくことができるのでおすすめです。言い回しや文章の順序など、変更したほうがよいところに赤字で書き込み、新しい原稿用紙に清書しましょう。
忘れがちなのは、読書感想文のタイトルです。「〇〇を読んで」だとありきたりです。せっかく子どもの考えや意見をしっかり書いた読書感想文なのですから、最後に内容にぴったりのタイトルをつけたいですね。
付箋やメモからキーワードを抜き出して考えてみましょう。
どうしても読書感想文を書けない場合
「どうしても読書感想文が書けない!」と思う理由として、「そんなに感動したところがない」「感想がおもしろかった(もしくはつまらなかった)以外にない」と感じていることがあります。「感動しなければ読書感想文は書けない」と考えているのかもしれません。
この場合は、少しでも心が動いたことを聞いて膨らませてみましょう。「感動」するほどではないけれど「ふーん、こんな考え方もあるのか」程度に心が動いたところをピックアップします。
そして、「自分だったらどうか」「この登場人物の気持ちはどうか」「著者は何を伝えたいのか」を考えて、「自分の体験」で関係するものはないか思い出せるように、親が質問することによってサポートしてあげましょう。
子どもは自分の体験なら、詳しく書けるからです。ポイントは、本に書かれているテーマの中から、自分の身近な例に落とし込めるものを探し出すことです。「はじめ、なか1、なか2、おわり」の構成を参考に、読む前の自分と読んだあとの自分の考えの変化などを挙げ、今後取り入れたい部分を書きます。
親が読書感想文に向き合う時のポイント
親が読書感想文に向き合うときのポイントは下記のとおりです。
- 口を出しすぎない
- 否定しない
- 子どもの意見を聞く
- 子どもの気持ちを言葉にするサポートをする
詳しく見ていきましょう。
口を出しすぎない
読書感想文はあくまで子どもが書くものです。サポートするために質問をしたり、メモの手伝いなどはしても、子どもの考えを邪魔するようなことはしないようにしましょう。
アドバイスのつもりでも、子どもは自分の考えを親の言うことに合わせて変えてしまうこともあります。親は「子どもの考えをより引き出す」「考えをより深める」ためにサポートする、という意識が大切です。
否定しない
本を選ぶときもそうですが、子どもの考えや意見を否定しないようにしましょう。否定されると自分の考えや意見に自信がなくなり、それ以上考えを深めたり自分の意見を言ったりすることが難しくなってしまいます。
子どもの話す内容に違和感を感じても、「そう思うんだね。どうしてそう思ったのかな?」と、共感してから理由を尋ねるようにしてみてください。子どもは説明しきれていないだけで、自分の意見や考えを持っています。それらを言葉にするサポートをしましょう。
子どもの意見を聞く
親が意見を言ってしまうのではなく、子どもの意見を聞きましょう。子どもはすぐに言葉が出てこないかもしれません。そのようなときも、急かさず待ってあげるようにしてください。
つい「言いたいのはこういうこと?」と先回りしてしまいがちですが、子どもの「考える力」「言葉にする力」を育むためにも、ゆったりと構えていましょう。
子どもの気持ちを言葉にするサポートをする
子どもはうまく気持ちや考えを言葉にできないことがあります。時間がかかることもあるでしょう。親がサポートするのは、「子どもが知っている言葉で、子どもの気持ちを言葉にするサポート」をすることです。
決して難しい言葉で表現するのではありません。子どもでも知っている簡単な言葉で、子どもの気持ちや考えを表現することはできます。
たとえば「うれしい」を表現するとき。「うれしい」と感じるとき、体にはどんな変化があるのか?過去にあった体験と似ているか?似ているならどんなところが似ているのか?など、表現を深堀していくときには、親の質問がサポートになります。
子どもが自分の気持ちや考えに向き合い、それを表現することで考えを深め、自分についての理解を深めることができるでしょう。
読書感想文をきっかけに自分の心を向き合う体験を
読書感想文は、子どもが初めて一人で取り組もうとすると難しく感じるでしょう。そのままにしておくと、自分の気持ちを文章にすることへの苦手意識も出てくるかもしれません。
読書感想文をきっかけに、親子で対話をし、文章を書く楽しさに気づき、自分の思いを表現できるようになることは、様々な分野で生かされてくるでしょう。
読書感想文に取り組むことで身につく「考える力」「考えを深める力」「考えをまとめる力」「自分について考えを深める力」「気持ちを言葉にする力」。
これらの力を養うことは、子どもの未来を切り開く力につながります。読書感想文を書くのは少し時間がかかるかもしれませんが、ぜひ取り組んでみてくださいね。
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