【2023年SDGs達成度ランキング】日本は21位に転落!5目標に「深刻な課題あり」
2023年6月に公開されたSDGsの達成度・進捗状況に関する国際レポートSustainable Development Report 2023(持続可能な開発レポート)内のSDGs達成度ランキング。
日本の順位が気になるところです。
2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs。約8年がたった今、達成状況はどうなっているのでしょうか?
達成度ランキングから日本の現状を解説します。
SDGs達成度ランキングとは?日本は21位!
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
Development Report 2023(持続可能な開発レポート)内のSDGs達成度ランキングは、国連の研究組織(SDSN/持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)がランキング形式で毎年発表しているものです。
SDGsの目標が各国でどれくらい達成されているかが「100点中何点か」のポイントで表されています。
ランキング上位は北欧の国が占めているのが分かりますね。
166か国の中で、上位は北欧諸国が多く、日本は21位となっています。
SDGsごとに進捗状況に応じた色分けと矢印で表現
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
上記は日本のスコアです。
各国に関してもそれぞれのSDGsについての評価がされています。
目標の色分けは
緑:SDGs達成
黄色:課題は残る
オレンジ:重要な課題が残っている
赤:大きな課題が残っている
となっています。
一方、矢印が示すのは目標達成の進捗度合いです。
SDGsが取り決められた2015年の状況を元に、2030年の目標達成に向けて達成可能かどうかを示しています。
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
緑の上向き矢印:2030年の目標達成に向けて順調な割合でスコアが上昇、または、目標以上
黄色の右斜め上向き矢印:目標達成に向けてやや下回っているが、2030年の目標達成に向けて50%以上達成している
オレンジの右向き矢印:停滞。2030年の目標達成に必要なペースを下回っている。目標達成の50%以下
赤の下向き矢印:スコアが減少。悪い方向に向かっている
2023年の日本のスコアを見る限り、赤の下向き矢印はありません。
SDGs達成度ランキング、世界の動向は?
2015年から2019年までは世界的にSDGsへの取り組みは目標数値よりも下回っていたとはいえ、進んでいました。
しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、停滞してしまいます。
調査が行われた2022年時点では、世界的に見ても2030年に目標達成が可能なSDGsは1つもありません。
特に、発展途上国が苦戦しているようです。
日本のSDGsの現状
日本のSDGs達成度ランキングは毎年下がってきています。
2016年:18位(75点)
2017年:11位(80.2点)
2018年:15位(78.5点)
2019年:15位(78.9点)
2020年:17位(79.1点)
2021年:18位(79.8点)
2022年:19位(79.6点)
2023年:21位(79.41点)
今年の評価はこちら。
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
悪い方向に向かっている下向きの赤い矢印がないとはいえ、大きな課題が残っているのが
SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」
SDGs12「つくる責任、つかう責任」
SDGs13「気候変動に具体的な対策を」
SDGs14「海の豊かさも守ろう」
SDGs15「陸の豊かさも守ろう」
の5つ。
詳しくみてみましょう。
SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」の日本の課題とは
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」は「男女平等を達成し、すべての女性と女児に力を与える」こと。
指標の中でも、日本が「重要な課題がある」とされているのが
- 国会で女性が占める議席
- 男女間の賃金格差
の2つの指標です。
令和5年4月の「女性活躍・男女共同参画における現状と課題」によると、衆議院における女性議員の割合は10.0%、参議院に置ける女性議員の割合は26.0%となっています。
IPU(列国議会同盟)の発表によると、世界の女性議員の割合は26.7%です。日本の女性議員の割合は決して高いとはいえません。
また、男女間の賃金格差については、経済協力開発機構(OECD)によると、2022年の時点で、日本は男性賃金を100とした場合、男女差が21.3ポイントあります。これは、男性が100万円もらっているとしたら、女性は約79万円の賃金になっているということ。OECD平均である11.9ポイント差の約2倍となっており、男女間での賃金格差が大きい状態です。
前年度よりも格差は解消傾向にあるとはいえ、まだまだ課題が残っています。
参考元
「女性活躍・男女共同参画における現状と課題」
IPU
OECD 男女間賃金格差
SDGs5について詳しくはこちらから!
「SDGs 5.ジェンダー平等を実現しよう」とは?私たちができること
SDGs12「つくる責任、つかう責任」の日本の課題とは
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
SDGs12「つくる責任、つかう責任」は「持続可能な生産パターンと消費を確保する事」。
日本の課題は
- 電子廃棄物
- プラスチック廃棄物の輸出
です。
ただし、「電子廃棄物」は「・・」のため、「情報が入手できない」の表示があり、「プラスチック廃棄物の輸出」は順調な割合でスコアが上昇していることを示す緑の上向き矢印がついています。
課題がある現状でも、努力が認められているようです。
SDGs12について、詳しくはこちらから!
「SDGs 12.つくる責任、つかう責任」の取り組み事例8選!
SDGs13「気候変動に具体的な対策を」の日本の課題とは
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
SDGs13「気候変動に具体的な対策を」は「気候変動とその影響に対処するために緊急の行動を起こす」こと。
日本の課題は下記の3つです。
- 化石燃料の燃焼とセメント生産によるCO2排出量
- 輸入に伴うCO2排出量
- EUR60 /tCO2 での炭素価格スコア
地球温暖化の原因の一つとされる温室効果ガス。大気中の二酸化炭素などの濃度が上昇することにより温室効果が高まり、結果、地球の温度が上がっていきます。
温室効果ガス排出の大きな原因は、化石燃料の燃焼による電気と熱の生成。電力の多くは石炭、石油、天然ガスを燃やすことでつくられており、それによって二酸化炭素と亜酸化窒素が発生し温室効果ガスの元となってしまうのです。
引用元:資源エネルギー庁「エネルギー白書2023 第二部 エネルギー動向」
日本は2022年のデータによると、電力の88.9%を化石燃料に依存しています。
温室効果ガスや汚染物質をほとんど発生しない再生可能エネルギーにシフトすることが求められています。
SDGs15について、詳しくはこちらから!
「SDGs 13.気候変動に具体的な対策を」の国内外の取り組み事例5選!
SDGs14「海の豊かさも守ろう」の日本の課題とは
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
SDGs14「海の豊かさも守ろう」は「持続可能な開発のために、海洋、海洋資源を保護し、持続可能な形で利用」すること。
日本の課題は下記です。
- 海洋健康指数・きれいな水のスコア
- 乱獲された崩壊した資源から捕獲された魚
- 輸入品に組み込まれた海洋生物多様性の脅威
指標の中でも課題があり、悪い方向に向かっているとされるのが「乱獲または崩壊した資源から捕獲された魚」。これは、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の中で行われる過剰漁業のことを指します。
海洋資源を守るためには、漁獲量や漁獲努力量を適切に管理して、資源状況の悪化を防ぐ必要がありますが、一部の過剰漁獲、乱獲行為が世界で問題視されているのです。
2015年の日本が輸入した天然水産物のうち、24~36%、金額にして1800~2700億円が違法または無報告漁業によるものと推定されていました。(G. Pramoda, T. J. Pitcherb & G. Mantha (2017) Estimates of illegal and unreported seafood imports to Japan. Marine Policy 84.)
過剰な漁獲は水産物資源を悪化させるだけではなく、違法に獲られた水産物は安価で販売されるため、漁業規制を遵守する水産物生産者の利益を圧迫してしまいます。
そのため、IUU漁業で獲られた天然水産物を国内で流通させないように、外国の政府と事業者に水産物が適法に獲られ運ばれた証明書の添付を義務付ける「水産流通適正化法」が2022年に施行されています。
SDGs14について、詳しくはこちらから!
親子で考えよう!目標14 海を守る
SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の日本の課題とは
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
SDGs15「陸の豊かさも守ろう」は「陸上生態系の保護、回復、持続可能な利用の促進、森林の持続可能な管理、砂漠化との闘い、土地劣化の阻止と逆転、生物多様性の損失の阻止」のことです。
指標の中でも課題があり、悪い方向に向かっているとされるのが「レッドリスト種の生存指数」。
レッドリストとは、IUCN(国際自然保護連合)が取りまとめている絶滅の恐れのある野生生物の種のリストです。
現在、存在が確認されている野生生物は213万1,499種。そのうちの14万7,517種の絶滅危機とされ、2022年10月の時点でレッドリストには、最も絶滅の恐れが高いとされる、3つのカテゴリーに、4万1,459種の野生生物が記載されました。
日本では環境省がレッドリストをまとめており、2020年版では、3,716種が絶滅の恐れのある種(絶滅危惧種)として掲載されました。
現在、約4万種の生き物が毎年絶滅しているとされています。
森林や動植物の生態系を維持することは、人間の安定した生活維持にもつながっていくため、重要視されています。
参考:環境省 「レッドリスト・レッドデータブック」
日本が達成しているSDGsは2つ!
一方、日本が達成しているSDGsもあります。
それは、
SDGs4「質の高い教育をみんなに」
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
SDGs9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
引用元:Development Report 2023(持続可能な開発レポート)
の2つ。
ただし、黄色の上向き矢印「やや改善中」がついているため、「SDGs達成が軌道に乗っているか、維持している」になることが求められます。
SDGs達成状況はまだ厳しい状況。自分でできることもやってみよう
世界的に見ても、SDGsの達成状況はあまりよくはありません。
2030年が過ぎれば終わりではなく、継続的に取り組んでいくことも必要です。
まずは、自分事として考え、できることから始めてみましょう。
SDGs達成度ランキングから、親子で考えることもできます。
例えば
- なぜ北欧諸国が上位を占めているのか?
- 発電方法との関連性は?
- 国土に森林が占める割合はどう関係してくるか?
- 再生可能エネルギーを主に使用している国の特徴は?
- 日本が多く使っている化石燃料はどんな悪影響があるのか?
- 各国でどれぐらいの電力が使われているのか?
などを調べてみるのもいいですね。
SDGsランキングは目で見て分かりやすい表、色分けされた地図なども掲載されているため、一緒に見て話し合うのもSDGsについて考えるきっかけになるでしょう。
こちらの記事もご参考に!
家庭における身近なSDGs事例!