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地方のプログラミング教育!地域格差に対して私たちができること

プログラミング
地方のプログラミング教育!地域格差に対して私たちができること

小学校で必修化されたプログラミング教育。地方の子どもとプログラミング教育はどのような状況なのでしょうか。都市部との地域格差はあるのでしょうか。
地方のプログラミング教育にフリーランスという立場で情熱を注ぐ社谷内さんをご紹介します。

地方でのプログラミング教育にフリーランスで情熱を注いでいる社谷内達也さん。なぜいま地方でプログラミング教育なのか、を編集部Hiroが伺いました。

【社谷内達也(やしろやち・たつや)】
大学卒業後、学校にプログラミング教材を販売する会社で西日本営業統括を担当し、3年間、学校や自治体にアプローチしてきた。その後、退職して地元石川県にUターン。Uターン後はクラウドファンディングを実施し、3か月で80万円を調達し、地元の子どもたちにプログラミング体験会を実施。その実績を買われ、2年間中学校の講師として技術・体育を担当。2020年からは独立し、大手FCのプログラミング教室の講師を行いながら自ら運営するプログラミング教室も展開。プログラミング塾を開校したい私塾に対し、コンテンツ提供やコンサルティングも行っている。一般社団法人Himi Stem Lab代表。

地方の子どもたちがプログラミング教育で置いていかれる現状

Hiroーあらためてこれまでの活動について教えてください。

社谷内さんー大学を卒業して、教育版レゴのEV3を学校におろしている会社に入りました。それがプログラミングとの出会いです。営業で学校を回らせてもらい、自治体のトップや教育委員会の方とお話しする機会が多くあったのですが、自治体の予算次第で子どもが受ける教育は変わるんだと実感しました。

自治体の予算ありきで教材が決まって、予算ありきで子どもたちの学びのチャンスが変わるんだと知りました。

それで、地元に帰って自分がプログラミングを広める側になろうと思い、会社をやめて今の活動に至ります。

Hiroー関西の担当をされていたのですよね。

社谷内さんー西日本を担当していたので、富山県から沖縄県まで2府22県を回っていました。でも、北陸からの引き合いが全然こなくて、これでは自分の地元がどんどん置いていかれるなと思い、自分が地元に戻りました。

Hiroー自治体間の格差を感じて北陸に戻ったんですね。

社谷内さんーはい、そうです。使命感で地元に戻りました。

失敗が楽しく、ワクワクが止まらないのがプログラミング


Hiroー石川県に戻って何をしましたか?

社谷内さんーまずプログラミングを広めるための教材を買おうと思い、クラウドファンディグをしました。それと同時に学校現場を見たかったので、地元の中学校に2年間講師で勤めました。体育と技術担当でした。技術ではもちろんプログラミングを教えました。

Hiroークラウドファンディングでお金を集めてプログラミング教室をやったのですね。教室での子どもたちの反応はどうでした?

社谷内さんーやはりすごかったです。プログラミングという新しいものと出会ったときの子どもたちの顔は今でも励みになるし、活動の根本であると思います

Hiroー学校でプログラミングが必修化されて、予算がない自治体の学校はどうしているのですか?

社谷内さんーScratch(スクラッチ)など無料のものを使っています。でも学校でやると「次はこのブロックを入れて、その後にこれを入れてね」といった感じのコーチングになってしまい、子どもたちのワクワクが足りない気がしています。

Hiroープログラミングのよさはどこにあると考えていますか?

社谷内さんープログラミングでコーディングを書いたり、論理的思考を身につけたり、というのはどちらかといえば副産物だと考えています。

大事なのは、例えばロボットを使って2人1組で取り組んだときの合意形成とか、何回もトライしていくことだと思っています。学ぶワクワクや、失敗が楽しいと思う気持ち、わからないことがぞくぞくする感じの方が大事だと思います。

ロボットやプログラミングを通して、子どもたちが楽しんで創造しているのですが、これはプログラミングにしかできないことかなと思います。

Hiroープログラミングスキルよりも先が見えない時代の中で自分で考えて想像して柔軟に動けることの方が大事ですよね。

社谷内さんーその通りなんです。これから先どうなるのか見えないから、子どもたちにいろんなチャンス、武器を与えるのが大人の役目だと思っています。

プログラミングについてはこちらの記事でご紹介しています!
これで安心!小学校で行われるプログラミング教育の授業を3つ紹介!
小学校のScratch(スクラッチ)授業実例3選!

想像をかたちにできる子どもが未来を切りひらく


Hiroーこれから子どもたちが生きていくうえで必要な能力って何だと思われますか?

社谷内さんー想像をかたちにする力だと思っています。コロナ禍のあとどうなるか、不安も含めいろんなイメージはするけれど、それをどうするか、クリエイトすることが大事です。

この先どうなるかわからないと嘆くのではなく、こうあるべきだと自分で道を作っていくのです。実現できなくてもとにかくトライアンドエラーしていく力は大事だと思います。

学校は子どもに答えを教えますよね。「黙って頑張って勉強しなさい」と子どもたちに知識を詰め込みます。でも社会人になったら「それくらい自分で考えなよ」と言われます。この矛盾は子どもたちがかわいそうです。

学校にいる間は自分で考えないようにさせて、社会に出たあとのノウハウを教えてないのは大人の責任ですよね。自分で考えられない人を作ってしまっています。

Hiroー問題に解答する能力は身についても、問題を解決する能力は身につかない。

社谷内さんーそうなんです。答えがなかったら自分ではもう何もできなくなってしまうのです。プログラミングはその反対で子どもたちが自分で考えていくものです。

Hiroー社谷内さんのプログラミング教室はどのようなカリキュラムなのですか?

社谷内さんーカリキュラムは特に置かず、ぼくの頭の中で子どもたちの様子を見ながら決めています。子どもたちの習熟度が上がってきたら難しくしていきます。できるようになったことや次の目標は伝えていますが、教材も固定していません。レゴだけではなく、Scratch(スクラッチ)、コードモンキーなどいろいろやるようにしています。

Hiroーそれはなぜですか?

社谷内さんープログラミングは好きだけどロボットはいやという子どももいます。それから、日によって子どもたちのやりたいことは変わります。ここは自由に自分の好きなことをやっていいんだよ、と言うと子どもたちは喜びます。

Hiroー通っている子どもたちの親御さんからはどんな声がありますか。

社谷内さんーこんなに黙々と集中して取り組む姿を見たことがなかったと言っている親御さんが多いです

学校からは落ち着きがないとか、話を聞いていないとか嫌な報告ばかりで、褒められた経験があまりないけれども、生き生きとプログラミング教室に通っている姿は嬉しいと言われます。

Hiroー学校で落ち着きがないと注意されている子も楽しんでやれているんですね。

社谷内さんープログラミング教室では落ち着きがないくらいでいいんです。

地方の子どもたちにプログラミングを学ぶチャンスを


Hiroー想像を形にする力が育まれる、こんないいプログラミングって地方だとどういう現状ですか?

社谷内さんー地方は、プログラミングってなんですかっていう親御さんが多くて、そこから教えないといけない場合が多いです。プログラミングの無料体験会には来てくれます。でも、プログラミングをやってどうなるのか、という考えの親御さんが多いです。

Hiroーではどうやって地方でプログラミングをPRしているのですか?

社谷内さんー無料体験会で子どもが楽しんでいる姿を見ると親御さんが変わってくることもあります。それから、子どもがITツールを使えない現状を目の当たりにして焦る親御さもいます。

Hiroー無料体験会にも来ない人が大半だと思いますが、それがまた子どもたちの可能性を狭めているのですね。

社谷内さんーそうですね。「学校で必修でプログミングやるんですよね?それならわざわざ別で習わなくていいです」という人もいます。

地方だからこそプログラミング!

社谷内さんー地方の親御さんたちはITができないから就職できないといったようなITで困った経験がありません。だから、仲間と社団法人を立ち上げて、もっと地方の人にITができる場合のゴールから見せてあげたいと思っています。

一つのイベントを立ちあげて、中高生にパワーポイントやワードでチラシを作ってもらったり、アプリを作ってもらったり、目標を決めて必要なものを体験してもらえるようなことを仕掛けたいと思っています。アプリなんて作れるものなのかなと地方の人たちは思っています。

ですから、地元の人たちで、きちんとそういうものを作れる人材を作っていこうという活動なのです。プログラミングも含め、目標を決めてこんなことができるというのを見せる活動を地方でやっていきます。

Hiroーそのような活動が地方に必要な理由は何ですか?

社谷内さんー優秀な人ほど都会に出ていく中で、地方が衰退していくのは目に見えています。ほかの地方とどう戦うかと考えたときに、人材を地産地消していかなければダメだと思うからです。でも地方の行政も難しくて、高齢者にはお金をかけられるけれど、教育にお金をかけることがなかなかできないでいます。

Hiroー地方の人たちに向けて最後にこれだけは伝えたいということはありますか?

社谷内さんープログラミングを学ぶかどうかは置いておいて、地方にいたからプログラミングを学べなかったと子どもたちに思ってほしくないのです。

プログラミングが絶対だとは思っていないのですが、子どもたちの習い事を選ぶ選択肢にあげてほしいし、そうすることが大人の役目だと思います。

みらいいではさまざまな人や企業にインタビューを行っています。その様子はこちらの記事でご紹介しています。
清水建設のSDGs!社員が家庭で実践するSDGsが面白い!
【企業の面白いSDGs取り組みレポート】土になるプラスチックに迫る!
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みらいいのみらいの学びのフェスティバルとみらいいひらめきラボ

みらいいでは新しい学びや考える力が体感できるオンラインワークショップ「みらいの学びフェスティバル」を開催しています。

2021年8月には千葉銀行の特別協力のもとオンラインで1500名を超える小学生と保護者の方にご参加いただき、ゲームプログラミングを体験したり、おカネについて学んだりしていただきました。
イベントの様子はこちら

また、子どもの視点でSDGsをはじめとする社会課題を捉える「みらいいひらめきラボ」を開催しています。プログラミングを通して、子どもたちならではの想像力を発揮し、社会課題の解決法をかたちにしています。2021年6月に開催したみらいいひらめきラボオンラインで小学6年生のキッズプログラマーたちがオンラインで作品のプレゼンテーションをしました。

小学生のプログラミング作品はこちらからご覧ください!
小学生×SDGs×プログラミング!「コロナに対応したまち作り
小学生×SDGs×プログラミング!「ろすなし村の冒険」
初めてのゲーム作り!「レッツシューティング」が完成!

みらいいではプログラミングを通したさまざまなイベントを随時開催!

みらいいでは様々なイベントを開催しています。イベント開催についてのご相談をお待ちしています。
宛先:みらいいイベント開催事務局
メール:event@miraii.jp

先が見えない中でも必死にやる大事さを子どもから学ぶ

学ぶ機会を選べる都会と限られた中で学ぶ地方の子どもの教育格差をなくしたいと地方でプログラミングを広める活動を続ける社谷内さん。

わからない中でも必死にやる大事さを子どもたちから教わっているからこそ、自分もやらなければ!とコロナ禍にも負けず突き進んでいます。

プログラミングがまだまだ理解されていない地方だからこそ、プログラミングは大きな武器になりえます。プログラミングを生かして将来地方で大きく活躍できる子どもを育てる活動には長い時間が必要ですが、これからも社谷内さんの挑戦から目が離せません。

社谷内さんが手がけるプログラミング無料体験会

社谷内さんが代表を務めるPCN能登では能登を中心にプログラミング無料体験会を開催しています、2021年2月には国立のと青少年交流の家で親子プログラミング体験会を開催しました。

そのほか小学生向けプログラミング体験会、中学生向けプログラミング体験会、教員向けプログラミング研修会などを行っています。今年度も12月、1月、2月に3日間のScratch教室を開催予定(定員72名)です。

詳しくはPCN能登(プログラミングクラブネットワーク)までお問い合わせください。


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